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頭蓋仙骨治療 T ( 物理的側面について:Ver2

( 本ページのみが表示される場合、頭蓋仙骨治療T をクリックすることで左側に目次が表示されます )
本項は、頭蓋仙骨治療 U ( エネルギー的側面Ver2 ) と対になっています、こちらも是非ご覧下さい
2009年より、治療の傍ら、吉祥寺で頭蓋をテーマにした ワークショップVer2 を主宰しています
参加希望の方が4人集まると、全員で7回の開催日程を調整するシステムです
詳しくは、頭蓋ワークショップVer2 をご覧下さい

・はじめに

当方は1999年秋にロルフメソッドの施術者として開業しましたが、当時より頭蓋仙骨治療に本質的な良さを感じ、全ての手技療法の頂点に位置する治療技術であるとの認識の元に、臨床を重ねて来ました。
当HPも、2003年の開設以来、頭蓋仙骨治療をどの様にお伝えすればその素晴らしさを理解して頂けるか、試行錯誤を重ねた結果、頭蓋仙骨治療の説明と共に、治療における本質まで遡っての説明に至っています。

・頭蓋仙骨治療の概略

頭蓋仙骨治療(頭蓋仙骨療法)とは、手技で頭蓋骨から仙骨までを調整をする手技療法です。
頭蓋が微細な閉じたり開いたりの動きを繰り返しているイラスト
頭蓋に施術している実例のイラスト
極々簡単に説明しますと、頭蓋は呼吸のような微細な動きを繰り返しており(上図左側)、この動きには、しばしば身体全体の歪みや滞りが象徴的に現れており、これらの改善を意図した手技による施術(上図右側)を指していますが、頭蓋の歪みや滞りは身体の司令塔である脳や中枢神経に影響を及ぼし易い部位と言う特質があり、これらの改善は、存在の本質的な部分までを対象とした治療と位置づけることも可能だと考えています。

・治療には、物理的な要素と、エネルギー的な要素があり、異なる特質を有しています

頭蓋仙骨治療に限らず、全ての治療には物理的な要素と、エネルギー的な要素が混在しています。
頭蓋仙骨治療では、この両者が象徴的に現れており、物理的な要素は目視可能な事象としてオーバーグラウンドで機能し、エネルギー的な要素は概ね目視不可能な事象としてアンダーグラウンドで機能しています。
指を触れて行う物理的な施術の1例
物理的なコミットの1例
エネルギーも同時に作用しています
指を触れずに行うエネルギー的な施術の1例
エネルギー的なコミットの1例
エネルギーのみの作用になります
そして、物理的な要素と、エネルギー的な要素は異なる特質を有しています。
具体的には、物理的な要素は指等で実際に患者の組織を動かす動作が相当し、幾何学的正確さが要求されますが、エネルギー的な要素は、施術者の意識のあり方が治療の治療効果を左右し、当サイトで両者のページを分けて説明している理由もここにあります。
このページは、頭蓋仙骨治療(T):物理的側面 として、頭蓋に対する物理的な施術、目視可能で実際に触れることで存在の確認が可能な事象を中心に、色々と説明しています。
頭蓋仙骨治療について、名称は知っているがどの様な施術を行うか、頭蓋骨に対してどの様なメカニズムでアプローチを行っているのか、等々に関心のある方には、このページは特に参考になると思います
同時に、アンダーグラウンドにおけるエネルギーの作用ですが、これらは目視不可能であり、ピンと来ない方も多いと思われますが、20年以上頭蓋、及び全身の色々な部位への施術を行って来まして、実際のダメージの回復は治癒エネルギーによって為されるとの結論に至っております。
また、頭蓋への施術は、他の部位と比べて治癒反応におけるエネルギー比重が高いと考えられ、同時にこれらアンダーの領域では、オーバーの領域に比べて遥かに複雑な要素とメカニズムが存在しており、これらの作用について、頭蓋仙骨治療(U):エネルギー的側面 に詳しく説明しています。
実際に治療を受けてご自身ダメージの治癒を経験したり、そのメカニズムや原理に関心のある方、臨床の場に携わっていてエネルギーの作用を感じている方に対しても、参考になると思います。

・物理的要素とエネルギー的要素の、主従関係に対する認識について

当方は1999年に開業しましたが、2000年代の半ばくらいから、治癒のメカニズムは物理とエネルギーの相互作用では無いかと感じられるようになり、当初、その比率は物理が主でエネルギーが従でしたが、臨床を重ねるうちにこの比率は徐々に変化し、2010年代の半ばくらいにはエネルーが主で物理が従であるとの認識に至りましたが、当時は感覚的なレベルに留まっていました。
特に、エネルギーに関しましては科学的な検証の難しい領域であり、治癒エネルギーの作用に関する論理的な裏づけが得られない状況が続いていたのですが、2021年にある程度の論理的な説明が可能になり、色々な進展に繋がりました。
本件に関する説明も、物理的領域とエネルギー的領域にまたがっており、以下のリンクにて詳しく説明しています。
頭蓋仙骨治療T物理的側面       >   4、頭蓋リズム発生のメカニズム
頭蓋仙骨治療Uエネルギー的側面   >   4、頭蓋リズムの存在:頭蓋リズム発生のメカニズム
また、当方主宰の 頭蓋・内臓ワークショップ におきましても、2009年の開始当初は物理が物理が主でエネルギーが従でしたが、これをエネルギーを主とした、Ver2にバージョンアップすることが出来ました。
Ver2になっての感想ですが、こちらの方が正鵠を射ている感じで、受講生にとっては従来より少ない労力で頭蓋仙骨治療を臨床の場で使える様になり、教える側にとりましても、少ない労力でお伝えしたいことを伝えられるようになりました。
当サイトの中心である頭蓋仙骨治療のページも、同様な趣旨で、Ver2として全面的な見直しに繋がりました。
また、当サイトでは、治療における物理的な要素やエネルギー的な要素について、色々なことを述べていますが、当方は臨床家であり、ここで述べていることは全て実際の臨床の場で実現可能であり、単なる机上の理論ではありません。
従って、吉祥寺までおいで頂き、実際に治療を受けて頂ければ、実際に体験することが可能です。
因みに、私は、1999年の秋にロルフメソッドの施術者として吉祥寺で開業し、ロルフメソッド関係の色々なワークショップに参加する傍ら、頭蓋仙骨治療も幾人の講師から学びましたが、最も影響を受けたのは、アメリカ人のオステオパスであるジム・ジェラスが治療方法として確立した、バイオダイナミクスオステオパシーと呼ばれる手技療法で、2004年から2017年くらいまでの10数年に渡って、トム・シェーバーからワークショップ形式で学びましたが、ジム・ジェラスのクラスに参加したこともあります。
もう1つ、頭蓋への施術には治療としての切り口と、リラクゼーション的な切り口があり、当方では純然たる治療と位置付けた施術を提供しており、当HPもその趣旨に沿った説明となります。
ですので、頭蓋仙骨治療と称しましても、本項とは全く異なる方式が存在している事もここで追記させて頂きます。

★ 主要な章のサマリー(要約)

このページも、かなりのボリュームになってしまいましたので、サマリーを追加しました。
  章   サマリー
1、頭蓋リズムについて 頭蓋は、 8〜12(回/分)の周期 で、微細な閉じたり開いたりの動きを繰り返している
この動作を正確に知覚することで、治療の指標とすることが可能になることの説明
2、脳脊髄液の構造・役割 脳脊髄液の循環の様子について、イラストを交えて説明
3、リズムのアンバランス 頭蓋リズムがアンバランスに陥った場合の予想される体調の悪化についての説明
4、リズムのメカニズム 頭蓋リズム発生のメカニズムについて、旧来の物理的な理論の説明
         〃              、Ver2としてのエネルギー的な要素による動作の説明
5、臨床への適用 リズムのアンバランスを知覚し、歪みの大元を特定し、歪みの開放に至る、1連の流れの説明
6、頭蓋リズムの知覚 リズムの知覚には、物理的要素とエネルギー的要素があり、物理的要素の説明
7、ダメージの位置の特定 リズムのアンバランスを知覚し、その知覚から歪みの大元を特定する物理的方法の説明
8、治癒エネルギー @、ダメージの回復は治癒エネルギーによって為されることの考察
A、物理的な施術により、治癒エネルギーが患部に誘われることの考察
9、触診の位置と鱗状縫合 頭蓋の触診は側頭骨1択であり、この論理的理解は、頭蓋治療を理解する上で有意義である
10、頭蓋への施術 @、最も多用される施術部位が鱗状縫合であり、頭蓋治療を理解する上で有意義である
A、シンプルな施術の1例として紹介
11、仙骨の開放 脊柱の上側は頭蓋であり下側は仙骨であり、仙骨への間接法の適用のメカニズム的な説明
12、脊柱への施術 脊柱は、頚椎、胸椎、腰椎に分けられるが、頚椎の開放は頭蓋に開放の一助になる
実例として、頚椎への施術を紹介
頭蓋の膨張・収縮の繰り返しの動きのイラスト
23ヶの骨より構成され、
これらの継ぎ目より、
膨張収縮の動きを繰り返しています
1分間に8〜12回前後の周期
動きの量は0.01mm程度
★頭蓋は、呼吸のような、膨張・収縮の微細な動きを繰り返しています

1、頭蓋リズムについて

頭蓋とは頭部の骨格の総称で、23個の頭蓋骨により寄木細工のように出来ていて、脳はこの頭蓋骨の中に収まっていますが、同時に脳脊髄液と呼ばれる液体に浮かんだ状態に保たれています。
( 脳、及び脳脊髄液に関しましては、このすぐ下でイラストを交えて説明しています )
個々の骨は、縫合結合と呼ばれる繊維性の結合組織で繋がっており、この継ぎ目は僅かですが可動性があり、頭蓋全体としては頭蓋リズムと呼ばれるイラストに示したような、膨張・収縮の動きを繰り返しています。
この動きは約 0.01mm( 凡そ紙1枚の厚さ )程度であり、とても微細ですが、頭蓋が健全な場合、スムーズな気持ちの良い、躍動感があり、生命力が感じられる動きを繰り返しています。
ところが、事故等で強い力がかかったり、精神的な強いストレスに晒されたりしますと、頭蓋が歪み、膨張・収縮の動きは小さくなり、歪みを反映したアンバランスな動きになってしまう場合があります。
また、様々な体調不良がこの動きの中に歪みとして現れていたり、歪みそのものが愁訴の原因となっている場合もあり、頭蓋リズムの動きのバランスの改善を指標にして治療が可能です。
ですので、頭蓋仙骨治療のベースは、この微細な動きのリズム、及び動きに内在する歪みまでを正確に安定して知覚出来ることであり、歪みを正確に掴むことで効果的な治療が可能になり、これ等が治療の基本になります。
そして、この様な微細な歪みを正確に知覚出来る触診技術は、全ての治療において有用なツールになります。
ちなみに、頭蓋リズムは、クレニオ・リズム・インパルス ( :CRI )、脳の1時呼吸、等々で呼ばれることもあり、これらは同じ意味になります。
以下、頭蓋仙骨治療について、解剖学的な説明を交えながら、順を追って説明して行きます。
脳脊髄液の中に脳が浮かんでいるイラスト
( 頭蓋と硬膜は、実際は密着しています )
★脳脊髄液の供給
『 脳幹 』 の中心部分であり、毛細血管網により形作られる脈絡叢より浸出
脳幹は、右脳と左脳と小脳の中心部分にあります、
★脳脊髄液の回収
・神経の抹消まで浸透し、排出され、
リンパ液と一緒になり回収
・4つの脳室の周囲の器官群から回収
★脳脊髄液は、硬膜中に満たされ、常にリフレッシュされ続けています

2、脳脊髄液の構造・役割、及びリフレッシュについて

前記、頭蓋仙骨治療の基本は頭蓋リズムを指標にした治療であることをお伝えしましたが、脳脊髄液と呼ばれる液体の作用も、頭蓋仙骨治療の理解に欠かせない要素の1つになります。
以下、脳脊髄液について、右のイラストを基にして説明します。
脳脊髄液は、硬膜と呼ばれる閉鎖系の膜の内部に満たされ、脳及び中枢神経はその液中に浸かった状態で保たれ、硬膜自体は頭蓋から脊柱、仙骨までの骨格系の中に格納されています。
脳脊髄液の役割りですが、まず第1に物理的な衝撃に対するクッションの機能が挙げられ、脳はとても柔らかい組織ですが、頭部を強打しても、脳脊髄液のクッションで守られる訳で、イメージとして、豆腐を保存する時に容器に水を張りますが、こんな感じに近いとも言えます。
同時に、脳に対して、水分の補給、神経の新陳代謝やホルモンの運搬の役割りを果たしていると考えられています。

・脳脊髄液の生理機能としてのリフレッシュ

前述の様に、脳脊髄液は衝撃に対する緩衝機能や、脳及び神経系の生理機能の維持のために極めて重要な役割を果たしています。
そして、容量は約200CC、1日に約3回入れ替わっていますが、血液の入れ替わりは1日に1割程度であることと比較すると、脳が如何に新陳代謝を必要としているかを理解して頂けると思います。
ですので、脳脊髄液がスムーズに流れているか否かは、良好な体調の為の重要な要素になり、これら脳脊髄液のコンディションについても、しばしば頭蓋リズムの歪みとして現れている場合があります。

・施術による脳脊髄液のリフレッシュ

右上に掲げたイラストで示した硬膜管自体に対して、間接法と呼ばれるテクニックにより歪みの開放も可能です。
効果としては、脳脊髄液の排出が改善されることで、脳脊髄液のリフレッシュ効果に繋がります。
★体調の不良は、しばしば頭蓋リズムのアンバランスに現れます

3、頭蓋リズムのアンバランスと体調不良について

ここまで、頭蓋骨の構造及び頭蓋リズム、及び脳脊髄液の作用や役割について説明し、これらのコンディションは頭蓋リズムの歪みとして現れている場合がしばしばあり、従い、頭蓋仙骨治療の基本は頭蓋リズムに内在する歪みを指標にした治療であることをお伝えしました。
ここでは、頭蓋リズムの歪みが体調に及ぼすケースについて、もう少し詳しくお伝えします。
★その前に、頭蓋以外の、リズムの乱れがコンディションに影響を及ぼしている例を簡単にお伝えします。
人間の身体は色々な機能が同時に働いており、一定の周期で働くことで機能している要素が幾つも存在します。
先ず思いつくのは心臓の鼓動であり、呼吸も、これらの一つになります。
鼓動の場合、脈拍で診ることが可能ですが、鼓動に乱れが発生している状態をを不整脈と呼び、心臓疾患や循環器系の疾患を現している場合が多い様です。
また、呼吸についても、呼気と吸気がバランスよく働いていないと、酸素の取り込みが本来の機能よりダウンしていることになり、血中酸素濃度の低下による白血球の減少繋がり、これは免疫系の低下として現れます。
また、身体のに色々な部分に負担がかかり続け、これらの状態を放置することは好ましくないでしょう。

・頭蓋の歪みについて

頭蓋リズムも同様で、膨張・収縮がバランスよくスムーズに動いている状態が健全な状態となります。
冒頭でもお伝えしましたが、体調が万全な場合、頭蓋リズムは左右対称でスムーズな気持ちの良い、躍動感があり、生命力が感じられる動きを繰り返しています。
それに対して、頭蓋に歪みが発生すると、動きは小さくなり、躍動感や生命力と言ったファクターも失われ、、引っ張られていたり、引っ掛かっていたり、 どこか歪みを反映したアンバランスな動きになってしまいます。
また、歪みは骨と骨の継ぎ目の縫合結合に発生する場合が多いですが、骨片自体が歪む場合もあります。
右のイラストは、本来微細な頭蓋の膨張・収縮の動きを、誇張して矢印の太さや向きで示すことより、アンバランスな動きの1例を象徴的に示しています。
一般的に、頭蓋に歪みが発生した場合、歪みによる制約で動きは小さくなり、動きの向きも本来の向きからズレてしまう場合が多いです。
具体的には、右側に歪みが発生し、右側の動きが小さく斜めになっている状態を表しており、この様な場合、慢性的に疲れ易くなったり、朝起きても疲れが残っていたり、体調不良や不定愁訴の原因になってしまうことがあります。
目の奥にも継目があり、眼窩の部分の硬化は慢性的な眼精疲労の原因となり易いです。
頭蓋がアンバランスに周期性の動きをしているイラスト
アンバランスな動きの1例
膨張・収縮の動きを、
矢印の太さと向きで現しています
治療としては、触診により頭蓋リズムを正確に知覚し、歪みの状態を把握し、その歪みに対して、間接法と呼ばれる技法を適用し、開放を図ります。
頭蓋や硬化の歪みをリリースすることで、事故の後遺症の治療、深いリラックス、自己治癒力や免疫の改善、慢性的な緊張からの開放等が図れます。

・脳脊髄液の流れについて

また、頭蓋の歪みが脳脊髄液の流れに対して影響を及ぼしているケースも、しばしば発生する症例です。
脳脊髄液の作用につきまして、上記簡単に説明しましたが、以下、もう少し詳しくお伝えして、頭蓋の歪みが脳脊髄液の作用に及ぼす影響について説明します。
頭蓋の内側は、何層かの膜構造で、その最も内側が硬膜になり、脳脊髄液が満たされ、その中に脳と脳幹、中枢神経が浮かんだ状態で緩やかに保持されています。
この時、下図左側のイラストに示すように、左脳と右脳を隔てる隔壁として大脳鎌、大脳と小脳を隔てる隔壁として小脳テント、これらは共に硬膜が脳の内部にせり出す、2重膜と呼ばれる構造により隔壁を形成しています。
大脳鎌と小脳テントの実際の形状は、下図右側の模型の写真の様に、まさに鎌やテントの形状になっています。
そして、この鎌の両側に左脳と右脳が位置し、鎌の内側のスペースには、左脳と右脳を繋ぐ神経の束である脳梁が収まっています。
更に脳梁中央の下側、同時に小脳の前側に脳幹が位置し、脳幹からは中枢神経が下方に伸びています。
これら、脳神経系は全て脳脊髄液の中に浮かぶように緩やかに保持されています。
頭蓋の内部の脳の状態のイラスト
左右の大脳と小脳、これら3つを仕切る幕のイラスト
脳の内部のイラスト
硬膜が内側に折れ曲がって入り込むことにより、
2重膜構造で、大脳鎌、小脳テントを形成しています
大脳鎌、小脳テントの実際の形状
大脳鎌の両側に右脳と左脳が、
小脳テントの下側に小脳が、それぞれ位置しています
左側のイラストでは、構造を示すために頭蓋と硬膜の間にスペースが描かれていますが、実際は何層かの隙間の無い膜構造であり、頭蓋の歪みはそのまま硬膜の凸凹した形として反映され、特に鎌やテントは脳脊髄液中に伸びる形で構成されている為、これらの歪みは脳脊髄液の流れに影響を及ぼします。
従い、頭蓋の歪みや硬化が発生していると、脳脊髄液の流れが本来のスムーズさを失っている場合があります。
治療としては、前述と同様に、頭蓋リズムを指標にして頭蓋の歪みの開放が有効になります。
具体的には、このページの下で説明している、間接法と呼ばれる技法を使いますが、大脳鎌、小脳テントと言った、頭蓋骨の内側の組織に対しても、物理的に働きかけることが可能です。
また、脳脊髄液の作用に対しましては、エネルギー的な治療も効果的な場合が多いです。
エネルギー的な治療に関しましては、頭蓋仙骨治療U・エネルギー的側面 も参照下さい。
頭蓋や硬膜(大脳鎌、小脳テント)の歪み、硬化、捻れ等をリリース( 物理的、及びエネルギー的 ) する事により、脳脊髄液の流れを改善し、脳そのものの活性化を図ることが出来ます。

・頭蓋リズムを指標とした治療について

以上、頭蓋の歪みが不調に関係しているケース、及び頭蓋の歪みが硬膜を介して脳脊髄液の流れに影響を及ぼしているケースを説明しましたが、この様な症例は頭蓋リズムのアンバランスとして現れている場合が多く、頭蓋リズムを指標として治療が可能です。

・頭蓋リズムとは何か?

では、頭蓋リズムとは何で、どの様なメカニズムで発生しているのでしょうか?
この件は、この下で説明していますが、頭蓋リズムの膨張・収縮のバランスを指標にして治療を行う場合、頭蓋リズムに対する理解は、より効果的な治療の為の重要なファクターであると考えています。
★頭蓋リズムとは、何なのでしょうか? 脳脊髄液の中に脳が浮かんでいるイラスト

★脳脊髄液の供給
右脳と左脳と小脳の中心部分にあり、
毛細血管網である脈絡叢より浸出
★脳脊髄液の回収
・神経の抹消まで浸透し、排出され、
リンパ液と一緒になり回収
・4つの脳室の周囲の器官群から回収

4、頭蓋リズム発生のメカニズムについて

ここまで、頭蓋には頭蓋リズムと呼ばれる規則性を有した動きがあり、このリズムに伴って脳脊髄液の循環が発生し、このリズムのバランスを指標にして治療が可能であることをお伝えしました。
この章では、頭蓋リズムの発生のメカニズムについてお伝えします。

・従来採用されていた、頭蓋リズムの発生するメカニズム

1990年代くらいまでは、脳脊髄液の供給、回収に伴い、脳脊髄液の液圧が変動し、その変動により頭蓋の膨張・収縮が起き、頭蓋リズムが発生しているとの考え方が主流を占めていました。
具体的には、脳脊髄液の供給により液圧は徐々に上昇すると同時に頭蓋も膨張し、許容圧の上限に達すると供給は停止して回収機能のみが働き、液圧は徐々に低下すると同時に頭蓋は収縮し、許容圧の下限に達すると再度供給が再開され、この繰り返しで頭蓋骨は膨張・収縮の動きが起き、頭蓋リズムが発生すると考えられていました。
確かにこの考え方で、頭蓋の膨張・収縮の動きを説明する事が可能であり、私は1998年に頭蓋仙骨治療を初めて習ったのですが、当時は上記の説明を受けています。

・従来の理論は正しいのか?

しかし、実際に臨床を繰り返す傍ら頭蓋等の学びも継続して行くなかで、知覚は徐々に微細なレベルまで掴めるようになり、経験も蓄積され、脳脊髄液の流れも実際に知覚出来るようになって来ました。
その感覚により上記の説明を検証してみると、もし上記の説明通りに作用しているのであれば、例えば、減圧から増圧に反転するタイミングで、何か微妙な切り替えのメカニズムらしき動きが知覚されると思われるのに対し、その様なものは殆ど感じられず、実にシンプルな感じなのです。
そこで感じたことは、この理論は正鵠を得ていないのでは無いか?、と言う疑問ですが、同時に、では実際に起きているメカニズムは何であるかといいますと、それに代わるものを持ち得ない状態が続いていました。

・ジム・ジェラスが述べている頭蓋リズムの発生するメカニズム:エネルギーの作用としての説明

そして、バイオダイナミクスオステオパシーを継続して学ぶ中で、それを治療方法として確立させたジムジェラスのコメントとして、『 頭蓋リズムは、ブレスオブライフの現われである 』 との説に出会いました。
ブレスオブライフとは何かと言うと、広義にはエネルギーであり、このエネルギーには潮の満ち引き(タイド)のような動きがあり、場合によってはタイドとも表現されることがあります。
そして、実際に触診で感じられる脳脊髄液の動きの反転の感じも、潮の満ち引き(タイド)のようなシンプルなものであり、まさにこれが正鵠を得ている感じなのです。
では、ブレスオブライフそのものとは何であり、どの様なものなのか、となりますと、ジムジェラスはエネルギーの形態の一つとして説明してはいますが、実は要領を得ない説明に終始しています。
因みに、本件はまさにエネルギーの範疇であり、以下にもう少し詳しく述べています。
( 頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 > 4、頭蓋リズムの存在 > ブレスオブライフとは? )

・ジャンピエール・バラルが述べている、モティリティと呼ばれる動作

話は変りますが、フラン人のオステオパスであるジャンピエール・バラルが、彼がジャンルとして確立した内臓マニュピレーションの中で、頭蓋リズムと似通った周期性を有する微細な動きとして、モティリティと呼ばれる動作を提唱しています。
更に、バラルは、『 モティリティと頭蓋仙骨リズムの間には何らかの関係があると信じている 』 とも述べており、ジムも、上記コメントと同時に、『 頭蓋リズムもモティリティも、共にブレスオブライフの現れの一つである 』 と述べており、これらを勘案して考察すると、『 頭蓋リズムはブレスオブライフの現われである 』 との説が、臨床において感覚的に納得できるレベルを超えて、かなりの確度を有していると考えられるのです。
そして、これらもやはりエネルギーの範疇であり、以下に詳述しています。
( 頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 > 4、頭蓋リズムの存在 )
バラルの著書:内臓マニュピレーション
かなり難解な書籍ですが、
名著であると思います
エネルギー的側面補足
以上を要約すると、頭蓋仙骨治療の基本は頭蓋リズムを指標にした治療であり、頭蓋リズムの大元はブレスオブライフと呼ばれるエネルギーの寄せたり引いたりの動きの現れである、と言うことになります。
★私が、どの様な考え方で治療を行っているかを説明します

5、臨床への適用について

ここまで、頭蓋仙骨治療の基本は頭蓋リズムを指標にした施術であり、頭蓋リズムとは頭蓋骨の物理的な膨張・収縮の動きを指しますが、この動きは、ブレスオブライフ(若しくはタイド)と呼ばれるエネルギーの現われであることをお伝えしました。
次に、頭蓋リズムを指標にした、具体的な治療の方法、考え方、メカニズムについてお伝えします。
ここでは、転倒等で頭部を強打し、この事が契機となり体調が不調になったケースを例として取り上げます。
右の図は、頭蓋リズムによる頭蓋の動きを、誇張して矢印で現しており、右側の前頭骨と側頭骨の継ぎ目にダメージが発生し、頭蓋リズムの膨張・収縮の動きがアンバランスになっている状態を示しています。
頭蓋にダメージがある場合の、頭蓋の周期性の動きが歪んでいるイラスト
頭蓋リズムによる動きを、
誇張して矢印で現しています
一般的に、頭蓋の歪みがきつければきついほど、頭蓋リズムの開いたり閉じたりの動きは小さくなり、また、動きの向きも歪んだ方向になります。
同時に、頭蓋全体は寄木細工のように繋がっており、一部分のみ歪むと言うことは構造上ありえず、頭蓋全体が変形するように歪み、歪みの量は、小さい部位から大きい部位までアナログ的に分布した形で発生し、頭蓋リズムはこれらの歪みが反映された動きになっています。
図による説明に話を戻しますと、ダメージの大元が右側にあるため、右側の歪みは大きく、それを反映して頭蓋リズムの右側の動きは小さく、左側は歪みが小さいため、頭蓋は大きく動いています。
同時に、動きの方向にも歪みが反映されるために、右側の動きがより歪んだ動きになり、矢印の向きと太さで、それぞれを表現しています。

・臨床における、実際の治療の1例

治療として考えた場合、以下の手順がオーソドックスなものとして考えられます。
以下、治療の流れを箇条書きで示します。
 @、指の腹を使い、左右より、耳の上側を触診します(写真左下)
 A、触診の対象は、膨張・収縮の動きである頭蓋リズムになります(頭蓋リズムによる動き、写真右下)
頭蓋仙骨治療のスタートのポジション 頭蓋における、閉じたり開いたりの動作を周期的に繰り返しているイラスト
このポジションよりスタートします 0.01mmレベルの膨張・収縮の動きを繰り返しています
 B、頭蓋リズムに内在する歪みを知覚します(歪みの1例、写真左下)
 C、ダメージの位置の目星をつけます(左右のステレオイメージにより、ダメージの位置を知覚、写真左下)
頭蓋にダメージがある場合の、頭蓋の周期性の動きが歪んでいるイラスト ダメージに対して治療を行っているイラスト
ダメージにより、膨張・収縮の動きに歪みが発生しています ダメージに対して間接法を適用しています
 D、その位置に対して、指先を移動します(写真右上)
 E、治療として間接法を適用します(写真右上)
 F、再度触診を行い、治療効果を確認し、次のステップに移ります
治療の流れは以上になりますが、この一連の中に、重要であり且つ急所となる1つの前提と3つの要素が含まれています。
治療が機能する為の項目 項目の極簡単な内容
前提:頭蓋リズムの存在 ここまで、色々とお伝えしました頭蓋リズムの存在が、頭蓋仙骨治療の前提となっています
このページでは、主に物理的な要素について述べています
要素1:知覚 触診による、0.01mmレベルの動き、及び動きに内在している歪みまでの知覚
『 6、頭蓋リズムの知覚 』 にて詳しく述べており、本ページの中心的テーマになります
要素2:特定 左右の指で知覚された歪みの内在している動きにより、ダメージの部位の特定
『 7、ダメージ位置の特定 』 にて詳しく述べています
要素3:治療 特定されたダメージに対して、間接法と呼ばれる治療技術の適用
『 8、治癒エネルギーの作用 』 にて詳しく述べています
以上が1つの前提と3つの要素になりますが、これらの前提と要素には、オーバーグラウンドでの目視可能な物理的な要素と、アンダーグラウンドでの一般的には目視が難しいエネルギー的な要素が存在しています。
この時、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの両方の要素は密接に関係しており、このページの冒頭でもお伝えしましたが、アンダーの領域では、オーバーの領域に比べて遥かに複雑な要素とメカニズムが存在し、本ページと対になっている、『 頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 』 では同じ項目について、エネルギー的な要素を中心にした説明を行っています。
次に、各々の項目について、物理的な要素とエネルギー的な要素を、対比する形で表で記述し、順次もう少し詳しく説明致します。
項目 物理的要素 エネルギー的要素
前提:
頭蓋リズムの存在
頭蓋は、0.01mm、8〜12回/分の、物理的な、
閉じたり開いたりの動作を繰り返している
ブレスオブライフの顕現と考えられる
ブレスオブライフ(タイド)と呼ばれている
周期的な動作を有するエネルギーが存在し
このエネルギーの顕現が物理的動作
頭蓋に歪みが発生している場合、頭蓋リズム、ブレスオブライフ、ともに歪みが内包されている
但しこの歪みは、物理とエネルギーの特質の違いにより、若干異なる歪みとして顕現している
要素1:知覚 指先により、直接的な知覚が可能
指先、腕、肩、等に柔軟性が要求される、
物理的に捜すと見失う
掌により、直接触れずに知覚が可能
アジナチャクラ等でも、知覚可能
但し、知覚には、意識の拡張が要求される
広ければ広いほど、知覚は正確になる
要素2:特定 指先よりの知覚を脳で演算して特定が可能 エネルギー的に直感的な特定が可能
一般に、エネルギー、物理、両要素の合算で特定が行われている
エネルギー的な存在に気が付いていない場合も多いが、例え治療家が気が付いていなくとも、
アンダーグラウンドで機能している
要素3:治療 物理的な窓を開くことでエネルギーを誘う
幾何学的な正確さが要求される
誘導された治癒エネルギーにより為される
治療に於いても、意識の拡張が要求される
広ければ広いほど、治療効果もアップ
★頭蓋リズムの知覚について、ここでは物理的な要素についての説明になります

6、頭蓋リズムの知覚

頭蓋に対する施術で、(リラクゼーションとは異なる)治療的な要素を指向した場合、頭蓋リズムを安定して正確に知覚できる触診技術が急所になります。
この章では、頭蓋リズムの知覚についてお伝えします。

・触診による、0.01mmレベルの動きに内在している歪みの知覚

頭蓋リズム、及びそこに内在する歪みまでも、安定して正確に知覚出来ることが、頭蓋仙骨治療の土台に相当することは既にお伝えしました。
この為には、先ず、膨張・収縮の動きを『 開いた・閉じた 』 若しくは『 エクステンション・フレクション 』 として、安定して知覚出来ることが、最初の一歩になりますが、通例この知覚がかなり難しく、頭蓋仙骨治療を学ぶ場合、最初の関門として苦心する部分です。
この事は、取りも直さず、頭蓋仙骨治療を教える側にとっても、苦心する部分でした。

・苦労してしまう理由

実際、幾つかの場所で頭蓋仙骨治療を教えて来ましたが、頭蓋リズムを物理的な動きのみであるとの認識により、頭蓋リズムを指先のみで知覚しようとすると難易度が高くなります。
この様な認識が出来てしまう理由ですが、頭蓋リズムはブレスオブライフと呼ばれるエネルギーの顕現であると考えられるのに対して、通例、エネルギーについて言及されることが乏しいため、消去法的に物理的な動作のみであるとの認識が作られてしまうと考えられます。
そこで、最初にエネルギーに対してきちんと言語化して説明し、実技においても、最初にエネルギーの知覚から入り、そこに物理的な知覚を加える形で学びを進めると、教わる側、教える側、ともに遥かに少ない労力でこの関門をクリア出来ることが判って来ました。
本件は、当方で主催している 頭蓋ワークショップ で詳しくお伝えしていますので、是非参照下さい。
以上、頭蓋リズムの触診についてお伝えしましたが、このページの目的は、【 物理的側面 】 ですので、以下、物理的な要素についてお伝えします。
頭蓋リズムを触診により知覚しているイラスト 頭蓋にダメージがある場合の、頭蓋の周期性の動きが歪んでいるイラスト
触診のポジション 0.01mmレベルの動きに内在する歪みまでを知覚したい

・触診の物理的要素の急所は、指の使い方

上記、治療には触診には物理的要素とエネルギー的要素があることをお伝えしていますが、触診に於いても物理的要素とエネルギー的要素があり、効果的な治療の為には両者ともに重要ですが、ここでは物理的要素として指の使い方を中心に説明します
指の使い方は、概ね、以下に示す3種類に大別されます。
強すぎる触診の場合:指で抑えているイラスト 適正な触診の場合:指が追随しているイラスト 弱すぎる触診の場合:指が離れ過ぎのイラスト
強すぎる触診 適正な触診 弱すぎる触診

・強すぎる触診

最初のケースは強すぎる触診で、頭蓋リズムを指先で知覚しようと意図すると、指先で情報を取りに行くことになり、触診は強くなり、ほぼ間違いなく動きを見失います。
これは、最も陥り易いパターンで、動きを見失しなうと更に取りに行ってしまい、触診は更に強くなり、しばしば悪循環に陥ります。
指先で情報を取りに行く癖が潜在意識に刷り込まれている場合が多く、これを克服する必要があります。
この弊害は幾つかあり、以下に表にして示します。
項目 内容
・頭蓋を抑えてしまう 頭蓋リズムは非常に微細な動きであり、触診が強いと、患者の頭蓋の動きを抑えてしまう場合が往々にして発生し、こうなると、そもそも治療になりません。
・エネルギー的な侵害 上記の場合、殆どのケースでエネルギー的な侵害も発生してしまいます。
・指先、手首、肘肩の関節
 の硬化
0.01mmレベルの微細な動きを物理的に知覚する為には、施術者の身体自体にも柔軟性が要求されます。
強すぎる触診の場合、殆どの場合指から掌、肩までの柔軟性が失われています。
・求心性の神経細胞の圧迫 上記と関係していますが、知覚した情報は施術者の指先の求心性の神経細胞により脳に伝達されますが、柔軟性が失われていると神経細胞が圧迫され、微妙な動きが脳に伝達されません。

・適正な触診

適正な触診は、しばしば、『 5gタッチ 』 とも呼ばれており、触診の圧はかなり少なく、触れているかいないか、その境界線上な感じで、指先が頭蓋リズムの、膨張・収縮の動きに追随している状態となります。
具体的な感覚としては、患者の頭髪の腰を知覚するくらいが目安になります。
触診では、0.01mmレベルの動きに内在する歪んだ動きまでを知覚したいのですが、この為には、指先が動きに追随することで、内在する歪みの知覚が可能になります

・弱すぎる触診

適正な触診に対して、触診が弱すぎるケースも散見されます。
この場合、頭蓋が膨張した位置を物理的に知覚可能で、従い、頭蓋リズムはある意味で安定して知覚可能ですが、物理的な歪みの情報までの知覚は不可能になります。
但し、本人が自覚出来ているか否かに関わらず、エネルギー的に同時に知覚している場合も多い様です。
また、この場合の極端なケースが指が完全に離れている状態になりますが、エネルギー的な知覚が為されていれば、立体的にダメージの位置の特定も可能で、治療としては成立します。
しかし、最も効果的な治療の為には、知覚される情報は最大であることが望ましく、適正な触診では物理とエネルギーの両方の正確な知覚が可能になり、こちらの方がベターとなります。

・頭蓋リズムの知覚におけるエネルギー的要素

以上、ここでは、触診における物理的要素をお伝えしましたが、頭蓋リズムの安定して正確な知覚は頭蓋仙骨治療の土台であり、施術者の意識のあり方までが大きく関係しています。
意識のあり方等々は、エネルギー的な範疇に入ると思われ、以下に詳しく述べていますので是非ご覧下さい。
      頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 > 5、頭蓋リズムの知覚
★触診により得られた情報を元にして、ダメージの位置を特定します

7、ダメージの位置の特定

上記、歪みを正確に知覚出来たとしても、その情報を元にダメージの部位を出来るだけ正確に特定する必要があり、これは全ての全身の治療でも言い得ることなのですが、最も上位に位置するダメージの部位から施術を行って行く必要があり、これが正鵠を得ていないと、治療直後は一見改善していても、確実に戻ります。
要するに、最も大きな歪みでは無く、枝葉末節の歪みをいくらリリースしても、殆ど効果はありません。

・左右の指で知覚された歪んだ動きを元にした、ダメージの部位の特定

右の参考図で示している、黒○で示した部位をリリースする必要があります。
2番目、3番目に大きな歪みにリリースを試みた場合、リリース直後は効果が出る場合も多いですが、結局のところ、症状が戻ってしまう事が多いのです。
この理由として、頭蓋骨や縫合部の繊維性の組織はある程度の柔軟性を有するため、2番目、3番目に大きい歪みをリリースしても、その影響で全体に変化を及ぼすことは可能ですが、最も大きな歪みが残っていると、時間の経過で最も大きな歪みが全体を支配することになり易いと考えられます。
従い、最も大きな歪みを特定出来るか否かは、かなり重要な要素になります。
頭蓋にダメージがある場合の、頭蓋の周期性の動きが歪んでいるイラスト
また、愁訴の中心となる部位が、最も上位のダメージの部位とは一致していない場合も多々あり、先ずこの辺りに治療の難しさがあります。
全ての治療で、戻りをゼロにすることは困難ではありますが、逆に言いますと、どんなに施術を受けても戻ってしまう場合、この様なメカニズムの場合が多い様です。
当方に来て頂けるクライエントさんは、殆どの方が色々な治療を相当種類受けても満足行く効果が得られず、その末に当方に来られる方が多いですが、この様な場合、初回で最も上位の部位を見つけることは困難な場合が多く、色々な角度から施術を試み、戻り具合も勘案しながら、試行錯誤を繰り返して上位に位置するダメージの部位を捜して行く場合も多いです。

・立体的な認識について

最も大きな歪みを特定する為には、頭蓋仙骨治療でしたら頭蓋全体を立体的に俯瞰して、歪みの分布を知覚する必要があり、この為には、触診により立体的なイメージを作れることが必要になります。
私たちは立体を認識する時に、視覚であれば、左目からの情報と右目からの情報を別々に知覚し、脳の中で演算して立体的なイメージを作ります。
聴覚であれば、左の耳からの情報と右の耳からの情報で、やはり脳の中で演算してどちらの方向から音が聞こえて来るか等のイメージを作ります。
これと同じ様に左右の指先から異なる歪みの情報を感じ取り、立体的な歪みとして認識が可能です。
ですから、この上の、『 6、頭蓋リズムの知覚 』 でもお伝えしたように、単に頭蓋のリズムのサイクルを知覚するだけでは不十分で、そこに内包される歪みや左右のアンバランスまでを知覚出来る事が必要になります。

・頭蓋模型を参考にしたダメージ位置の特定

ここまで、指先からの左右の情報の違いにより、頭蓋のダメージの部位を立体的に特定する必要があることをお伝えしましたが、実際の臨床においては、治療中に患者の頭部の隣に頭蓋模型を置いてダメージの部位の特定の参考にすることで、より効果的な治療に繋がります。
と言って、いきなり黙って患者の横に模型をおくと、びっくりされると困るので、三谷の場合は、『 より良い治療の為に、横に模型を置かせて下さいね。 』 と一言断りを入れるようにしています。
同様に、脚や腕の骨格模型はそれぞれの対象の部位の治療において、すごく役に立ち、実際の臨床中においても、しばしば参考にしています。
この構造を全部覚えるのは困難

・物理的な情報とエネルギー的な情報による、擬似立体イメージ

以上は、ダメージ位置の特定における、物理的な要素になりますが、現実問題として、物理的な要素のみによる立体イメージの構築は、かなり難しいと思われます。
実績を有する治療家の場合、物理的情報と同時にエネルギー的情報も知覚がされており、これらを総合してダメージの部位の特定が行われていると考えられます。
この根拠ですが、『 頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 』 の冒頭で述べている通り、当方は、アジナチャクラを自分でフルオープン・フルクローズ可能で、オープンからクローズにチェンジすると、それまで当たり前に掴めていた情報が一気に失われ、通常自分にとっては普通に知覚されている諸々の事象について、どこまでがアジナチャクラによる知覚であったのかの判別が可能です。
実際の臨床で、アジナチャクラをクローズして見ると、立体イメージの構築は可能ではありますが、なかり精度が低下する感じがあります。
また、物理的イメージとエネルギー的イメージの比率ですが、エネルギー的イメージはそれ単体でも立体的な要素が加味されており、場合によってはエネルギー的イメージの比率がかなり高い場合も考えられ、結論としては、個人差がかなり大きいと思われます。
もう1つ、重要なことは、本人がエネルギー的要素を自覚していない場合も相当に多いと思われ、このことは、自覚るか否かに関わらず、構造的に起きている事象であると考えられます。
やはりこの根拠としては、三谷自身がエネルギー的に知覚していることを自覚したのが2006年頃であり、それ以前はエネルギー的な情報を知覚していたにも関わらず、気が付いていなかったと考えられるからです。
また、ここでは詳しくは述べませんが、池袋の専門学校での治療の授業を三谷とD講師の2人で受け持っており、、教育の一環として2人で触診中の治療家と患者の中間にエネルギーの遮蔽を作ってみたことがありますが、立体イメージの構築が出来なくなってしまったケースがあり、私の中で上記の裏づけになっています。
尚、本件につきましても、以下にエネルギー的視点から色々述べておりますので参照下さい。
    頭蓋仙骨治療U:エネルギー的側面 > 8、ダメージ位置の特定
★実際の治癒は、治癒エネルギーによって為されていると考えています

8、治癒エネルギー

エネルギーにも色々な種類があり、ここではダメージに対して治癒を促すエネルギーを治癒エネルギーと呼んでおり、この章では、ダメージの部位に治癒エネルギーを誘導する方法についてお伝えします。

・特定されたダメージに対して適用される、間接法と呼ばれる治療技術

治療として成り立つためには、物理的なダメージが施術によって実際に回復することが必須であり、頭蓋仙骨治療では、主に間接法と呼ばれるテクニックを用いますが、この技法は全身のダメージにも適用が可能です。
では、物理的なダメージが施術により回復するとは、どの様なメカニズムが働いているのでしょうか?
以下、『 治癒エネルギーに対する考察 』 次に、『 エネルギーの誘導における物理的要素 』 について、順にお伝えします。

8−@、治癒エネルギーに対する考察

・ダメージが回復するメカニズムとは?

治癒のメカニズムに対する疑義は、治療における根源的な意味を有していると考えられますが、この様な問いかけを特に意識しなくとも、施術によりダメージが回復することを経験則的に掴んでいれば、治療は成り立ちます。
別の見方をすると、ここで述べている治療は、既に 『 手技療法 』 として職業的に1つのジャンルとして成り立っており、そこで教えられている具体的な技法やテクニックを学べば、治療としては成り立つ訳です。
職業として考えれば、この様な問いかけを考察するよりも、各種の技法やテクニックを習得して生活が成り立つことが先ず優先されるでしょう。
私自身、この様な根源的な問題を考えるようになったのは、治療を教える仕事を続けている中で、単に自分が教わったパターンを踏襲しているだけでは不十分であり、治癒の本質を自分なりの言葉で構成できることの必要性を実感するに至ったからになります。
具体的には、このページでも述べていますが、頭蓋リズムの発生のメカニズムや、間接法により治癒が得られるメカニズム、これらの重要な項目に対して、自分の教わって来た理論は正鵠を得ていないのでは無いか、正鵠を得ていないが故に、治療を教える場合に必要以上に難解になり、言語化の難しいコツとか微妙な感覚が要求されてしまうのではないか?と言う疑問が避けて通れなくなって来た訳です。
これらに対して、エネルギーと言う概念を可能な限り言語化し、作用の中心に据える事で一気に明快になって来たのですが、それに伴い、治癒の根源的なメカニズムもある程度論理的な説明が可能になって来ました。

・エネルギーのみの操作で、治癒反応も可能である

以上、物理的な操作における治癒についてお伝えしましたが、実は物理的な操作は一切行わず、患者と距離を取り、エネルギーのみの操作でも治癒反応の誘発は可能であり、当方では、2006年より、エソテリックヒーリング として、提供して来ました。
しかし、エネルギーが同様に作用する場合、『 エネルギー単体 』 のみより、『 エネルギー+物理的な施術 』 の方が効果が判り易く、こちらの方が優先の状態になっています。
同時に、純然たるエネルギー治療の場合、物理的な要素を排するメリットを活かしたい訳であり、この様な趣旨でエソテリックヒーリングを提供しています。
因みに、ジム・ジェラスが確立したエネルギー治療である、バイオダイナミクスオステオパシーの場合、施術者は患者の肩等に軽く触れている場合が多く、この治療をエネルギーワークと称するのか、触れているので物理ワークの1つに含まれるのかは微妙な感じです。

・治癒は治癒エネルギーによって為される

以上を踏まえて、治癒は治癒エネルギーによって為されるとの結論に至っています。
ここに於いて、外見からは、物理的な操作により、物理的な治癒反応が起きて居るように見えますが、アンダーグラウンドではエネルギーが作用している訳で、このことを以下に表にして示します。
オーバーグラウンド
物理的な操作 物理的なダメージの回復
アンダーグラウンド
物理的な操作 エネルギーの動き 物理的なダメージの回復
そして、私の場合、物理的な操作により治癒エネルギーが導かれる様子が ( アジナチャクラにより ) リアルタイムで知覚可能なため、治療を受けていて治癒反応が感じられたタイミングを患者に教えてもらうと、私の感覚とほぼ一致する場合が多いのです。
このことは、私が知覚している感覚は多くの患者とも共有が可能であり、共有されることでこれらの感覚が私の一方的な感覚では無く、ある程度の客観性を有しているのでは無いかと考えています。
この時のメカニズムですが、これらを簡潔に言語化すると、『 物理的な操作によりダメージの部位に治癒エネルギーを誘っている 』 と表現が可能で、改めてこれらの全体像を以下に表にして示します。
変数1 変数2 変数3 変数4
操作の方法について 物理
(エネルギーも、
同時に作用している)
間接法 物理的組織を抵抗の少ない方に動かし、圧をかけ続ける
直接法 物理的組織を抵抗の多い方に動か、圧をかけ続ける
中間法(BMT) 物理的組織を抵抗が抜ける位置で停止し、待つ
エネルギーのみ 間接法 エネルギーを抵抗の少ない方に動かし、圧をかけ続ける
直接法 エネルギーを組織を抵抗の多い方に動かし、圧をかけ続ける
中間法(BMT) エネルギーを抵抗が抜ける位置で停止し、待つ
エネルギーの種類 治癒エネルギー 治療家の所属する複数の集合意識から、自動的に按分される
複数の集合意識は、天上に存在していると思われる
生存エネルギー 患者の有している生命エネルギー
以下、上記表について簡単に補足説明します。
基本は、物理的な操作により治癒エネルギーを誘っている訳ですが、エネルギーを誘う方法は、変数3として、3種類の方法があります。
同時に、これらは、エネルギーのみの操作でも、治癒エネルギーを誘うことが可能で、やはり変数3に示した3種類の方法があります。
更に、誘うエネルギーについても、変数2の2種類が考えられます。
これらの全ては、頭蓋仙骨治療において、関係しており、状況に応じて使いこなせることが効果的な治療に繋がり、最も使用頻度の高い技法が、水色で示した、『 物理的な操作による間接法 』 になりますが、間接法は、直接法と呼ばれるテクニックと表裏の関係にあり、この表裏の中間に、BMTと呼ばれる方法が在ります。
従い、間接法を正確に且つ最も効果的に適用可能な為には、表裏、中間にある、直接法、BMT も使えることが望ましく、頭蓋の場合は特に間接法が多いですが、時によっては、BMT、若しくは直接法を使います。
因みに、これら3種類の技法ですが、私の場合、使う割合は大雑把に言って以下の感じになっています。
中間法 : BMT : 直接法 ≒ 7 : 2 : 1

8−A、エネルギーの誘導における物理的要素

・『 物理的な操作による間接法 』 について

以上全体像についての考察をお伝えしましたが、このページは、物理的側面のページですので、以下に、『 物理的な操作による間接法 』 の物理的な側面についてお伝えします。
以下に、頭蓋仙骨治療における間接法の適用を3枚のイラストを参考にして説明します。
間接法の適用における、物理的な操作の概念を示したイラスト 物理的操作で治癒エネルギーが誘導される場合の概念のイラスト 頭蓋仙骨治療における、間接法の適用で、治癒エネルギーの及ぼす範囲のイラスト

・頭蓋の骨と骨を繋ぐ、縫合結合に歪みが発生している場合

歪みに対して両側より頭皮の上から挟み、互い違いに組織を物理的に動かし、抵抗の少ない方で軽い圧をかけながら待ちます。(イラスト、上左)
待っていると治癒エネルギーが誘導されて境界を越えて歪み(若しくはダメージ)に作用が始まります。(イラスト上中)
頭蓋仙骨治療の場合の、頭蓋骨と頭蓋骨を繋ぐ縫合結合に対して治癒エネルギーが誘導されます。(イラスト上右)
実際に間接法を適用している様子を、右に示します。
臨床で間接法を適用している様子の画像

・頭蓋骨そのもに歪みが発生してる場合

また、頭蓋骨そのものに歪みが発生している場合、やはり頭皮の上から骨そのもに対して間接法を適用します。
この時、骨は3つの組織から構成されており、表層は骨膜、中層が緻密質、深層が骨髄になります。
一般的に、骨そのものが歪んでいる場合、骨膜が歪んでいる場合が最も多く、その場合は骨膜のみに対して間接法を適用します。
緻密質が歪んでいる場合は、緻密質のみに間接法を適用し、骨髄が歪んでいる場合も、やはり骨髄のみに間接法を適用します。
これらの場合、歪んでいる層を正確に掴み、歪んでいる層のみに間接法を適用することが急所になり、必要な層のみに、正確に適用できるかどうかで、治療効果に多大な差が発生します。

・物理的な操作に於いては、幾何学的な正確さが必要になります

以上、治癒エネルギーを誘導するに当たっての物理的な操作について、説明しました。
これらの操作には、物理的な留意点と、エネルギー的な留意点があり、共にかなり多岐に渡っており、これらの総和として治療効果が左右されます。
以下、物理的な操作における留意点を説明しますが、一言で申しますと、幾何学的な正確さが必要になり、以下の表に示します。
項目 内容
動かす軌跡 要求される軌跡は、直線方向と回転方向に分けることが出来ます
直線方向の場合は、可能な限り正確に直線であること
回転方向の場合も、やはり可能な限り正確な円弧で、仮想中心がブレないこと
要するに、幾何学的なイメージが作れて、それに対して正確であること
圧の方向 方向は、歪みのパターンによって変わり、間接法または直接法と呼ばれる方法をケースバイケースで選択します
治療の過程で、間接法・直接法以外に、バランス法(BMT:中間法とも呼ばれています)も含めて最も効果的な方法を選択しながら、治療を進めます
圧の強さ 基本はごく軽い圧ですが、安定していることが必要です
微調整 治療反応が進むと、最も効果的な方向や圧が変化して来るケースもあります
場合によっては、リアルタイムで変化を感じ取り、方向や強さを微調整することも要求されます
解剖学的理解 解剖学的な頭蓋骨の構造、形状を理解して記憶していること
治療の物理的な要素において、頭蓋骨の構造的な理解は必須になります
すべの構造を完璧に理解記憶することは不可能ですが、理解は深いことが望ましいです
私の場合、頭蓋模型を横に置いて、それを参考にしながら治療を行うケースもあります
エネルギー
的な要素
頭蓋仙骨治療のエネルギー的な要素についても理解が必要です
理解と同時に、実際にエネルギーを知覚出来ていると、よりベターです
詳細は、頭蓋仙骨治療U(エネルギー的側面) で説明しています
頭蓋は3元的な立体構造であり、継ぎ目は至るところに存在し、立体として全ての部位で上記の要素が必要となり、指先にはかなりの繊細な感覚が要求されます。
そして、これらの要素がどこまで満たされているかが、治療効果の差となって現れます。

・頭蓋仙骨治療の全身の治療への応用について

頭蓋の微細な動きは、頭蓋骨だけでなく、全身の骨格系にも当てはまり、頭蓋を含む全身の骨格系は同期して閉じたり開いたりの動きをしています。
ですので、足先を触診すれば、頭蓋の動きに同期して動いている足から骨盤にかけて、ケースによっては頭蓋までの骨格の動きや、それに付随する歪みまで知覚することができます。
同様に手先を触診すれば、やはり頭蓋の動きに同期して動いている、腕全体の骨格の動きや歪みを知覚する事ができます。
これらの知覚は、腰痛や肩こり、その他の全ての治療に於いて、実際に役に立つ情報となります。
★頭蓋リズムを知覚するための触診の位置についての考察になります
頭蓋への触診、左右から頭頂骨を触診している画像
頭蓋リズムの触診
左右から、頭頂骨を触診します

9、触診の位置と鱗状縫合

ここまで、頭蓋仙骨治療について、頭蓋リズム、頭蓋の歪み、その開放について、等々、色々とお伝えして来ました。
頭蓋仙骨治療を、頭蓋リズムを指標とした頭蓋に対する治療と定義するならば、頭蓋リズムの安定して正確な知覚は、効果的な治療のために絶対必要な土台になります。
幾度も掲示して恐縮ですが、触診の様子は右に示した通り、左右から耳の数センチ上を、指先の腹で左右から挟むように行います。
20年以上遡りますがこの仕事を始めた頃に、頭蓋仙骨治療を3人のアメリカ人の講師から習いました。
3人とも、わざわざ遠く離れた日本まで赴いて治療技術を教えようと言うスピリットに溢れ、かなり強烈な個性の持ち主で、教え方もかなり異なっていましたが、頭蓋リズムの触診の指先の位置については皆同じで、特に疑問も差し挟まず、当然の如くに臨床で実践して来ました。
しかし、改めて考察してみると、この位置には複数の独立した必然性のある要素が存在し、更にこれらの必然は患者側及び施術者側にまたがっており、結果的に 『 これ1択 』 と言う感じが強いです。
以下順を追って説明しますが、上記の必然性のある要素の記述の部分を、アンダーラインにて示します。

・解剖学的な触診の位置

まず触診の指先の位置ですが下左のイラストで示す通り、頭頂骨の下側、鱗状縫合のすぐ上になります。

・頭蓋リズムによる、左右方向・前後方向の動きの大きさの比較

頭蓋を上方から見た動きの様子を、下中の写真で示しますが、実際に丁寧に触診してみますと、左右方向の膨張・収縮の動きは、前後方向の膨張・収縮の動きに比べると、遥かに小さい動きになっています。
このことは、頭蓋リズム自体に左右方向に動きが大きく、左右側方よりの触診は、動きの大きな部位を触診することになり、知覚がより判り易いことに繋がっています
頭蓋リズムを触診により知覚する時の指の位置のイラスト
人差し指、中指、薬指、
3指の指先の腹で触診
頭蓋リズムとしての、膨張・収縮の動きのイラスト
頭蓋の膨張・収縮
前後より左右に大きく動いています
頭蓋骨における、鱗状縫合の位置
頭蓋全体から見た、
鱗状縫合の位置になります

・鱗状縫合の構造、及び機能と触診の位置

鱗状縫合の拡大図を右に示します。
この鱗状縫合の接合面ですが、頭頂骨・側頭骨ともに楔状の斜面になっており、頭頂骨が側頭骨の内側に潜り込むように構成され、接合面の斜面は両面とも凸凹が形成され、この凸凹が入れ子のように接合しています。
この凸凹はお互いにレールの様に機能し、頭蓋リズムによる膨張・収縮の動きにおいて、頭頂骨と側頭骨ともに上下方向にお互いのレールの上をスライドするように動いています。
この部分がレール構造になっている理由ですが、 上中の写真で示した様に、この部分は頭蓋リズムにおける膨張・収縮で最も大きく動く部位であり、もしこの様なレール構造が無いと無秩序に動いてしまい、頭蓋全体の動きのバランスを維持できない可能性が考えられます。
鱗状縫合の拡大イラスト
頭頂骨及び側頭骨は
凸凹により上下方向に可動
同時に、もし、頭蓋に大きな歪みが発生した場合、この部分が更に無秩序に大きく動いてしまい、不具合が増幅されてしまう可能性も考えられます。
ここで感じることは、進化論的な考察になりますが、この様に最も動きの大きな部分にレールガイド構造が構成された固体が生き残り、この部分にガイド構造が無かった固体が生き残れなかったのでは無いでしょうか?
以上、鱗状縫合における凸凹のレールガイド構造についてお伝えしましたが、このレールガイド構造は、頭頂骨の斜面と側頭骨の斜面が滑るように可動しており、頭蓋に歪みよる応力が発生した場合、引っ掛かった動きになり易いと言う特徴が考えられます。
実際の臨床に於いても、殆どの場合、頭蓋には多かれ少なかれ何等かの歪みが発生していますが、殆どの場合鱗状縫合にも滞りが見受けられ、この滞りは、上記レールガイド構造の引っ掛かりだと考えられます。
この様な特徴を有する鱗状縫合のすぐ上側に、頭蓋リズムの触診の指の位置が来ていることは、非常に好都合であり、従い、鱗状縫合の開放は頭蓋仙骨治療における、指標の1つとして機能していると考えています。
【参考】
上記、鱗状縫合は凸凹のレールガイド構造により、直線方向に可動性を有することをお伝えしました。
しかし、頭蓋の治療に関する幾つかの書籍では、鱗状縫合はギア構造による回転運動であると記述も散見されます。
この理由として、『 頭蓋領域のオステオパシー (マグーン著)』 と言う頭蓋の治療に関する古典的な書物に、ギア構造であるとの記述があり、これが由来になっていると考えられます。
しかし、機械工学の中の1分野である、機構運動学的に解釈すると、この運動は直線運動であると考えられます。
池袋の医療系の専門学校で治療技術の講師をしていますが、その学校には実物の頭蓋骨の標本が5〜6体保存されており、治療技術の授業を2人で担当している同僚で解剖学を担当しているD講師と一緒に、授業の一環として全ての標本で鱗状縫合の様子を確認しましたが、やはり、ギアによる回転運動との解釈は無理があり、凸凹のレール構造による直線運動であるとの解釈が正鵠を得ているのでは無いか、と言う結論に到達しています。
因みに、当方元々の専攻は機械工学であり、この仕事の前職は、メーカーで自動組み立て機械の設計に従事しておりました。
また、前世でも、機械の設計を行っていた記憶があります。
頭蓋を触診しているイラスト
触診では、手首、肘、肩が、
リラックスしていることが必要
緊張があると感度が低下します

・施術者側からの触診のやり易さの件

『 6、頭蓋リズムの知覚 』 でもお伝えしましたが、触診での適正な触診圧は5g程度であり、0.01mmレベルの動きに内在する歪みまでを知覚する為には、指先が膨張・収縮の動きに追随していることが必要になります
この為には、手首、肘、肩等がリラックスして力が抜けている事が絶対に必要であり、どこか1箇所でも緊張があると、触診の感度が低下します。
触診の様子を右にイラストで示していますが、鱗状縫合に対する触診の位置は、手首、肘、肩等がリラックスした状態で左右から触診が可能で、頭蓋の幅も施術者側からみて、広すぎず、狭すぎず、程よい幅になっています

10、頭蓋への施術

ここまで、頭蓋リズム、頭蓋の歪み、その開放について色々とお伝えして来ました。
以下、具体的な頭蓋への施術を通して、間接法の適用に関する幾つかをお伝えします。

@、鱗状縫合

・最も施術の機会の多い部位:鱗状縫合

上記、鱗状縫合について色々とお伝えしましたが、改めて、実際の臨床では私が最も施術する機会の多い部位になります。
ここでは、先ず、鱗状縫合に対する実際の施術を説明します。

・実際の施術

下左の写真は、右側の鱗状縫合に間接法を適用している様子、下中のイラストはその時の指の位置を濃いグレーの楕円で示しています。
具体的には、左手の指は鱗状縫合の上側に、右手の指は鱗状縫合の下側に、指の腹で軽く触れ、前後方向及び上下方向に互い違いに軽く動かし、抵抗の少ない方で、動かした方向に軽く圧をかけ続け、そのまま待ちます。
待っていますと、治癒エネルギーが誘導(若しくは誘発)され、歪みは開放され、継ぎ目が緩んで来ます。
鱗状縫合に間接法を用いて施術している画像
鱗状縫合に間接法を適用
原則、両手を使います
鱗状縫合に間接法を用いて施術する場合の指の位置のイラスト
左手で頭頂骨を、右手で即頭骨を、
鱗状縫合を挟む形でポジション
間接法の適用における、物理的な操作の概念を示したイラスト
両手を互い違いに動かし、
抵抗の少ない方向で待ちます

・頭蓋骨の裏側まで開放が可能

ここでは、継ぎ目の構造についてもう少し詳しくお伝えすると同時に、間接法の及ぶ範囲についてもお伝えします。
先ず、鱗状縫合の構造について、もう少し詳しくお伝えします。
鱗状縫合に限らずに、頭蓋骨の縫合結合は全部同じ構造で、隣り合う骨同士は繊維性の組織で繋がれ、この組織は広義には結合組織と呼ばれるている組織の1つになります。
因みに、結合組織は身体中の至るところに存在し、場所によって名称が変わり、知名度の高いものとしては、筋膜、骨膜、靭帯、腱、硬膜や血管の外膜、等々があり、他の組織同士を互いに結び付けている場合や、組織間に充填されている場合等があります。興味のある方は、ネットで検索されますと、色々と説明がされています。
そして、結合組織自体は、筋肉と異なり、それ自体で動いたり動作を行うことは出来ませんが、ある程度の柔軟性を有しており、縫合結合は若干の可動性を有しています。
歪んでしまったり、硬化してしまう場合があり、頭蓋の縫合部分の歪みは、結合組織の歪みでもあります。
また、骨片自体が歪むこともあり、この場合は、骨膜の歪みが大きな割合を占めていますが、骨膜も結合組織の1つであり、結局、頭蓋骨の歪みは結合組織の歪みである、とも言い得ることになります。
そして、この結合組織の歪みや硬化に対しても、間接法が適用可能です。
と言うより、結合組織の歪みや硬化に対しては、他の色々な施術により1時的に柔軟性を回復させることは可能ですが、ある程度の永続性を得るためには、歪みそのものの開放が必須となり、私の知っている範囲では、間接法が最も効果が得られます。
右に、鱗状縫合の拡大図を示しています。
頭頂骨と側頭骨は、レール状の凸凹を有する斜面で縫合結合を形成していますが、同時に、下中のイラストの赤で示している様に、繊維性の結合組織で結び付けられていて、可動性を有しています。
鱗状縫合における頭頂骨と側頭骨が鱗の様に縫合されているイラスト
そして、この頭頂骨と側頭骨を結び付けている結合組織ですが、同じ結合組織として骨膜とか内部を充填する形で、縫合部分を越えて、下中のイラストの赤で示す様に繋がっています。
この様な構造の上で、頭頂骨と側頭骨に対して間接法を適用しますが、組織を動かす微妙な操作により、下中の赤く表示した矢印で示す様な範囲に対して、治癒エネルギーを誘導することが可能です。
具体的には、指で組織を互い違いに動かすに当たって、
・指先の圧を加減することによる、深さ
・動かす方向、ベクトル
・動かす距離
・かけ続ける圧の強さ、etc‥‥
を微妙に加減しながら、同時に誘導された治癒エネルギーにより治癒反応が起き、歪みの開放が進みますが、進み具合を知覚することで、に合わせて上記の各変数を微妙に変化させて行くことが可能になり、骨片の裏側まで治癒反応を誘発させることが可能です。
鱗状縫合への施術における指先の位置
凸凹の入れ子構造ですが、
同時に結合組織で繋がっています
鱗状縫合におけるの結合組織の状態の概念図
結合組織は継ぎ目だけでなく、
連続して裏側までも存在しています
間接法における、操作の方法を示した概念図
両手を互い違いに動かし、
抵抗の少ない方向で待ちます
尚、治癒の進み具合を知覚は、物理的な知覚と、エネルギー的な知覚があり、実際の治療では、この両方の知覚を総動員してベストな知覚を目指します。
以下に両者について簡単に説明致します。
知覚の種類 説明
物理的な知覚 物理的な知覚は、神経細胞により、情報が脳に伝達されます。
神経細胞には、求心性の神経細胞と、遠心性の神経細胞があり、この場合は前者が機能します
エネルギー的な知覚 基本的には、アジナチャクラよりの知覚であると考えています。
実際には、掌でもエネルギーの知覚は可能であり、気体の動きとして知覚されます
因みに、治癒の進み具合を知覚しながら指先を操作する方法は、自動制御的には、フィードバック制御に相当し、これに対して、単に最初に描いた概念による一方的な操作は、プログラム制御に相当します。
以上、鱗状縫合を例にして、間接法の細部についてお伝えしましたが、この様な考え方は、鱗状縫合に限定されることに限らずに、他の縫合に対しても適用が可能ですが、頭蓋に限定されずに、全身のどの部位に於いても適用が可能になります。
更に付け加えますと、以上は全て机上の論理では無く、実際に臨床で可能です。
この様なことが、色々な部位に対してどこまで安定して施術として可能であるかが、治療効果を左右します。

A、篩骨

篩骨に間接法を適用している画像
篩骨へのアプローチ
鼻の根本の奥にある篩骨(シコツ)と呼ばれる骨を緩めています。
上下から鼻の根本を軽くホールドし、継ぎ目の状態を感じます。
次に、やはり縫合の癖をリーディングし、間接法を用いて抵抗の少ない方向に軽い圧をかけ、緩むのを待ちます。
待っていると、フニャ〜、っと緩んできます。
★頭蓋仙骨治療との名称に含まれています、仙骨・尾骨についてお伝えします

11、仙骨・尾骨の開放

・仙骨について

この治療は、頭蓋仙骨治療と呼ばれており、頭蓋と仙骨は脊柱を介して上下対象の位置関係にあり、これらは1つの『 系 』 として捉えることが可能です。
下左に骨盤及び仙骨を示します。
仙骨の両側は、仙腸関節 と呼ばれる関節を介して左右の腸骨が位置し、上側には椎間板を挟むと同時に 腰仙関節 を介して腰椎、下側には 仙尾関節 を介して尾骨が位置しています。
下中は仙骨単体で斜めから裏側を、下右はやはり仙骨単体で斜めから表側を表しています。
骨盤は、左右の腸骨に挟まれるように仙骨が位置し、仙骨の下に尾骨が位置している骨格のイラスト
腰椎の下側、左右の腸骨の間に
仙骨が位置しています
仙骨と腸骨で形成される仙骨腸関節の、仙骨側の関節面
仙骨単体:裏側
仙腸関節を介して腸骨が位置します
仙骨における、骨片が癒合した名残の跡
仙骨単体:表側
複数の骨片の集合体です

・骨盤の歪み

しばしば、『 骨盤の歪み 』 と言う言葉を目にする機会があるかと思いますが、では、骨盤の歪みとは何がどの様に歪んでいるのでしょうか?
実際に、腸骨そのものが歪んでしまう場合もありますが、この比率は高く無く、仙骨本体の歪み、腰仙関節及び仙腸関節の歪みが複合した結果として、骨盤に歪みが発生している場合が多い様です

・仙骨本体の歪み

仙骨は1個の骨片のようにも見えますが、表側からの写真でも判る通り、5個の骨片が癒合していますが、厳密には5個の骨片の各々が更に3個の骨片が癒合したものである、計15個の骨片の癒合体になります。
この事は、癒合した面とそうでない要素に分かれ、その内部は密度の違いが発生していおり、この違いにより歪みが蓄積し易い構造になっています。
仙骨本体の歪みの開放には、ここまで色々とお伝えしている、間接法の適用により効果的に開放が可能です。

・仙骨の歪みの傾向

仙骨全体で同じ方向に捻れるような歪みがあったり、元々の骨片について、互い違いに歪みが発生していたり、人それぞれという感じです。
また、この部分は表面的な歪みを除去してみると、奥の方から隠れていた歪みが2重3重に出てくるケースがしばしばあります。
これらの歪みを、手技で触診しながら、一つ一つ丁寧に優しく緩めて行きます。
素晴らしい開放感を感じて頂ける場合が多いです。

・腰仙関節の歪み

腰仙関節も歪み易い部位で、場合によっては、歪んだ状態で固着しているケースもしばしば見られます。
また、腰仙関節の歪みや固着は腰の硬さに直結しており、腰痛の原因の1つになっている場合も多いです。
腰仙関節の歪みにつきましても、やはり、間接法の適用が効果的です。
固着している場合は、固着している組織に対しても間接法は適用可能ですが、時間を要する場合が多く、私の場合、施術者の肘等を用いて固着を壊してから、間接法を適用する場合が多いです。

・仙腸関節の歪み

仙腸関節は、仙骨の関節粗面と腸骨のやはり関節粗面が、繊維性の結合組織で結び付けられる構造になっており、この関節構造は、頭蓋骨の縫合結合と全く同じであり、違いは、関節粗面が大幅に広大な事になります。
仙腸関節の開放に対しましても、やはり、間接法が効果的です。

・何が最も効果的か?

以上3種類に歪みについて簡単にお伝えしましたが、最も効果的で、他の色々な不調や歪みに対して波及効果が最も期待できる部位が、仙骨本体になります。
仙骨の中心には、中枢神経が通っており、仙骨の歪みの開放は、中枢神経をフリーにする効果も期待でき、人によっては、異様に気持ちよく感じて貰えることがしばしばあります。

・頭蓋の開放の補助的な位置づけ

最初にお伝えしたように、頭蓋骨から脊柱、仙骨までは1つの系として捉えることが可能で、頭蓋の開放の一環として仙骨の開放は、しばしば凄く有効な場合があります。
特に、頭蓋の縫合部分でなかなか開放が進まない場合は、頭蓋に拘るよりも、目先を変えて仙骨の開放を試みることにより、なかなか進まない状況が打開される場合もしばしばあります。

12、脊柱への施術

頭蓋を調整しますと、脊柱から仙骨・骨盤までの歪みが頭蓋の滞りや歪みとリンクしている場合が、しばしば見受けられるます。
具体的には、脊柱において、頭蓋との歪みが関係しやすい部位は、右下の図の引出線で示した部位が挙げられ、この様な場合は、脊柱の開放も必要になって来ます。
右記各部分の開放には、各部分なりのノウハウが必要ですが、基本的には、間接法を用いることで開放を行います。 脊柱各部の解剖学的名称
名称 説明
AO 関節 頚椎1番と後頭骨の関節
C7T1 頚椎と胸椎の継ぎ目の関節
( 全身のバランスにおいての急所になります )
T2 胸椎2番
T12L1 胸椎と腰椎の継ぎ目の関節
腰仙関節 腰椎と仙骨の継ぎ目の関節
仙腸関節 仙骨とその両側にある腸骨との継ぎ目の関節
   参考、AO:頚椎の1番(Atlas)、後頭骨(Occcioital bone)
       C7:頚椎(Cervicai)7番(上から7番目)の略号
       T1:胸椎(Thoracic)1番(上から1番目)の略号
       L1:腰椎(Lumbar)1番(上から1番目)の略号

・頚椎の開放

上記、脊柱全体に対して簡単にお伝えしましたが、頚椎は頭蓋のすぐ下に位置し、頭部を支えている構造になっていますが、胸椎、腰椎に比較して構造的な弱さがあり最もダメージを受け易い部位の1つになっています。
また、頚椎の歪みと頭蓋の歪みが依存関係に陥っている場合もあり、頭蓋を開放する上で頚椎の歪みの開放が必要な場合もしばしば見受けられ、以下の表に当方で施術可能な頚椎に対する部位、及び方法を示します。
 部位、及び方法  簡単な説明
@、関節の、関節面に対して間接法を適用 後頭骨:頚椎1番、頚椎1番:頚椎2番、における関節面
A、頚椎の骨膜に対して間接法を適用
  (特に上部頚椎に適用)
個々の頚椎の骨膜を動かし、間接法を適用します
難易度は高いですが、効果的です
B、 〃 緻密質   〃   〃 緻密質  〃
C、 〃 骨髄    〃   〃 骨髄   〃
D、隣合う頚椎に対して間接法を適用 上下の頚椎を相対的に動かし、頚椎を繋ぐ靭帯を間接法を適用します
E、頚椎周囲の靭帯の固着 頚椎を繋ぐ靭帯が固着しているケース
F、頚椎周りの筋肉の開放 頚長筋、斜角筋、胸鎖乳突筋、等々に間接法を適用します
実際の臨床では、ケースバイケースでこれらを組み合わせて適用しています。
いずれの方法も、無理な力をかけたりしませんし、頚椎の治療でも主に間接法を適用しますが、弱い圧で組織を僅かに動かすだけで治癒反応を誘発出来るので、危険性は殆どありません。
上に挙げた部位の内、@、及びA、B、C、につき、以下に説明致します。

・上部頚椎の開放その@、関節面

先ず最初に、上部頚椎の構造、及び機能の説明になりますが、構造・機能を理解して頂くことで、治療についてのより深い理解に繋がると考えています。
後頭骨、頚椎、の関節の構造を示しており、これらの関節の椎間板の有無も示しています
上部頚椎の構成を示しています
頚椎1番と頚椎2番の組み合わさった構造を示しています
頚椎1番、〃 2番の形状を示しています
左側上の写真ですが、一番上に後頭骨、その下に頚椎1番、その更に下に頚椎2番、頚椎3番、等々を示しています。
後頭骨と頚椎1番(環椎)で構成される関節は、『 後頭環椎関節 』 と呼ばれ、頚椎1番(環椎)と頚椎2番(軸椎)で構成される関節は、『 環軸関節 』 と呼ばれ、それぞれ上下の骨の名称を引用しており、明快です。
この2つの関節は、他の脊柱の関節には無い特徴があり、それは椎間板が挟まれておらず、骨の関節面は『 硝子軟骨 』 と呼ばれるつるつるした光沢を有する軟骨が形成され、その硝子軟骨同士が滑る構造になっています。
以下、次にこれらの関節の機能について説明になります。
頭部のすぐ下に位置する、『 後頭環椎関節 』 ですが、関節の上側は後頭骨下面になり、関節面は後頭顆と呼ばれる下向きに凸状に出っ張った形状になっています。
それに対し下側の頚椎1番の上面は、左側下の写真で示している通り、上関節面と呼ばれる凹状の窪んだ形状になっています。
そして、後頭環椎関節は、この下向きの凸と、上向きの凹が組み合わさる構造で、左右2箇所に形成されています。
ここで重要な点は、左右2箇所に形成されることで、動作は上を向いたり下を向いたりの動きのみに限定され、頚椎1番に対して後頭骨が滑る構造として機能しています。
逆に言いますと、この後頭環椎関節は、頚の色々な動作の中で、上を向いたり下を向いたりの動作のみを受け持っている訳です。
それに対して、頚椎1番(環椎)と頚椎2番(軸椎)で構成される『 環軸関節 』では、頚椎1番は、右側の写真で示されている頚椎2番の上関節面の上で、歯突起(軸に相当)を中心に、頚椎1番の下関節面が滑る構造で、回転方向の動きのみを受け持っています。 頚椎1番、頚椎2番、それぞれの形状
以上を要約すると、上部頚椎の関節しての役割は、上を向いたり下を向いたりの動作は 『 後頭環椎関節 』 で受け持ち、左右に頚を回す動作を 『 環軸関節 』 を受け持っています。
そして、他の脊柱の関節は軟骨である椎間板が挟まれることでクッションの役割を担っていますが、この2箇所の関節は椎間板が無い分シャープな動作になり、関節面に滞りや引っ掛かりが発生すると、元々はシャープで緩みの少ない分だけ辛い違和感に直結します。
これらの治療ですが、上記2箇所の関節面そのものに対して、幾度もお伝えしている間接法の適用が可能で、施術自体は極々軽い力で左右から頚椎に働きかけるだけの施術ですが、これらの施術で頚椎の可動域は大幅にアップする場合が多く、頚の愁訴に対して、判り易い改善効果が得られる場合が多いです。

A、上部頚椎の開放、骨膜・緻密質・骨髄

頚椎1番、頚椎2番、それぞれの形状
上記、関節面に対しての間接法の適用をお伝えしました。
更に、後頭骨、頚椎1番、及び2番に対して、骨そものに対しても間接法の適用による治療が可能です。
ここでは、頚椎1番、及び2番についての説明になります。
先ず、頚椎1番(環椎)と頚椎2番(軸椎)の単体の形状を右側に、組み合わさった状態を右側下に示します。
頚椎1番、頚椎2番、ともにかなり複雑な形状で、骨そのものについても、歪みや硬化が発生していると考えられます。
頚椎1番と頚椎2番の組み合わさった構造を示しています
再掲示していますが、若干大きな画像になります
頚椎1番につきましては、他の骨と比べてドーナツ状の内孔の径が大きく、肉厚も薄いため、リング状の形状全体に歪みの発生が考えられます。
頚椎2番では、歯突起の部分で形状的な不連続が発生しており、やはり歪みの発生が考えられます。
骨そのものに歪みや硬化が発生しますと、滑り構造の関節面で部分的に面圧の強い部位と、弱い部位が発生し、動きの滑らかさが低下し、関節面の滞りや引っ掛かりの原因になります。
上記@では、これらの関節面に対して間接法の適用をお伝えしましたが、骨そのものに対しても間接法の適用が可能で、また別の角度からの治療になります。
単体の骨に対する間接法の適用に関しては、全ての骨は3層構造で、表層は骨膜、中層は緻密質、深層は骨髄、となっており、各々の層のみに対して、出来るだけ正確に間接法を適用することが急所になります。
骨片全体に対して、層を考慮せず単に間接法を適用したり、対象とする層に対するフォーカスが甘いと、治癒エネルギーは層を掻き混ぜることに作用し、効果はかなり減少してしまいます。
頚椎1番への間接法の適用については、骨膜への適用の場合、外形部分、内部の孔、に分けて正確に施術することが肝要になり、緻密質への適用については、ボリュームの多い部位へフォーカスします。
頚椎2番についても、頚椎1番と同様ですが、更に歯突起に対するフォーカスがプラスされます。
いずれにしましても、各層に対して正確に間接法を適用する為には、先ず、骨の物理的な形状を可能な限り正確に認識することが必要であり、この為には、施術時に骨格模型を眺めながら立体的に形状を認識することが効果的であり、同時に、指先での微妙な操作を可能にする、指先のコントロール技術が必要になります。
また、これらの施術も、皮膚の上から軽く触れて組織を軽く動かすだけ十分な効果を得ることが可能です。

13、施術のパターンについて:色々なパターンが可能です

@ 頭蓋調整単発でのフルセッション

1.5h〜2.0h かけて頭蓋骨全体を丁寧にリリースし、必要に応じて、骨盤や仙骨の調整も行います。
頭蓋骨は、冒頭の頭蓋模型の写真で示したように、寄木細工のように構成され、色々な箇所に歪みが出来ており、これらの歪みを効果的な(大きい)順に一つ一つリリースして行きます。
因みに、事故の後遺症の治療はこのパターンになります。

A 全身の調整の一環として頭蓋骨の調整

全身の調整に於いても、頭蓋骨の調整はとても重要です。
身体は全身で繋がっており、バランスを取り合うように複数の歪みが関係しており、脊柱や骨盤の歪みが頭蓋骨の歪みと繋がっているケースも多いです。
全身の調整の一環として行う場合は、適当なタイミングで頭蓋を触診し、身体との関係性が感じられる頭蓋の歪みをリリースし、また全身の他の箇所に戻り、これらを繰り返します。

B 個々のセッションでフィニッシュとして頭蓋の調整

私は全ての施術で最後の5〜10分程度、頭蓋の調整を行います。
この意図は、全身の歪みをリリースして行きますと、リリースと同時に歪みの1部は頭部に向かって逃げて行く傾向があり、最後に頭部の歪みを開放して各回の治療の仕上げとしています。

14、頭蓋仙骨治療の回数

特に回数の区切りはありません、1回でもOKです。
歪みをリリースしますと、緩んだ瞬間に効果を感じられる場合も多いです。

・後書き

(HP製作者のつぶき:2022/06/16)
1999年の開業以来、頭蓋仙骨治療に多大なる意味を感じ、自分の中ではこの施術を中心に据えて治療を行って来ました。
このHPを最初にアップしたのは、2003年のことで、早いもので、19年経ってしまいました。
小生元々は技術屋と言うこともあり、サイトの立ち上げや更新は自力で行い、自分で文章を作成すると同時にデジカメで写真を撮り、イラストを作成し、これらを組み合わせながら試行錯誤を繰り返し、完成度のアップを図って参りました。
その様な中で、頭蓋仙骨治療に関して、物理的な要素とエネルギー的な要素に分けた構成で記述するスタイルに思い至り、その構成での最初の更新が、2011/11/14でした。
次の大きな更新は、2016年のことで、この時は、エネルギーについて全面的な書き直しになりました。
今回の2022年は2度目の全面的な更新ですが、2020年に私の中で大きな転機が訪れました。
それまでは、物理とエネルギーに関して、徐々にその比重が物理からエネルギーに移りつつあったのですが、最後の一線でかろうじて物理に踏みとどまっていた諸々が、その一線を越えて、エネルギーに移行しました。
頭蓋・内臓ワークショップは、その一環として、エネルギーをメインに据えたVer2になりましたが、HPの頭蓋仙骨治療のページはそう簡単には更新が出来ず、伸び伸びになっていましたが、諸般の事情が発生し、2022年の3月の中旬に更新作業を開始しました。
以来、約3ヶ月間、先延ばしに出来るものは、全て先延ばしにして、更新作業に没頭したのですが、遅々として進みません。
改めて思うことは、最後に大幅に更新した、2016年当時と現在を比べると、相当に色々なことが判明して来ていた様で、表現したいと感じることが、新しく色々と浮かんで来ました。
同時に、1日、4時間とか5時間、毎日文章を作成しながら、ストックしてある写真から使えそうなカットを捜し、必要があれば新規に撮影し、必要なイラストを作成し、これらをどの様にレイアウトすればバランスよく収まるか、等々を総合的に考えながら、延々と作業が続き、『 俺は一体なんの為にこの様な面倒な作業を続けているのであろうか‥‥』 と自問する日々が続いた訳です。
最終的には、『 俺は、こう言うことが好きなんだなぁ〜 』 と自分自身を慰める言葉しか出てこなくなりました。
改めて思う事は、実際の臨床では、理論も大事ですが、これで喰っているので臨床で具体的な結果が求められます。
従い、どうしても試行錯誤が伴い、その過程は必ずしも理論化されていない要素が存在し、これらをサイトに表す為には、理論的に未整理な事柄にについて、言語化する必要があると言う事です。
従って、サイトの作成には、ある概念に対して、先ず文章による言語化を試み、そこから文章による表現では記述が不可能な要素を割り出し、それをサイトで表現するために施術の写真を参考図として示すのか、骨格模型等の写真を使うのか、若しくは、お絵かきソフトを用いてイラストを作成するのか、等々の判断を下し、まず、その路線で進めてみる、要するに作成した参考図をレイアウトして、それに合わせて文章を作成して行くのですが、それでもまた行き詰まるので、文章を修正し、参考図として、施術の写真か、模型の写真か、イラストか、これらのどれを修正するのか、新たに追加するのか、これらを限りなく繰り返して徐々に形になって行く、この様な過程を地道に進めて行く訳しか無いのです。
一般に行われている分業制、要するに企画する人が居て、文章を作成する人が居て、その結果、必要な図の仕様を出して、図を別な専門の人に発注する、と言う段取りに対して、このサイトは、全部私1人で同時進行的に作成している訳です。
逆に言うと、一般の分業制のシステムでは、当方の様なサイトを作成するのは、かなり困難なのでは無いかと感じている次第です。
(2023/5/14)
今回は、全面的に『 見出しタグ 』、の付与と、写真について写真の名称の付与を行うと同時に、文章も見直しを行いましたが、結果的にはかなりの部分に修正・加筆を行うことになってしまいました。
Webの進化、高度化はどんどん進んでいる様で、旧態依然としたままであると、ロボット君からはダメなページとして認識されてしまう様です。
確かに、私が初めてHPを作成した、2000年代の前半では、このHPの様な素人が作成したと思われるサイトもそこそこ見受けられましたが、近年、殆ど目にしなくなりました。
確かに、2000年代前半は、まだHPの黎明期に相当していた様に思い返され、ウィンドウズも、XP の時代でした‥‥。
ただ、治療における施術そのものは、かなりアナログ的な要素が残っている感じです。
【参考】(HP製作者のつぶき:2016/2/25)
私は、頭蓋仙骨治療を自分のセッションの中で、中心的に位置づけて色々な治療を行っています。
ですので、このHPの作成当初より、『 どの様なページを作れば、自分が考え、そして実際に施術として行っている頭蓋仙骨治療をお伝えることが出来るのだろうか?』と色々考えていました。
Webによる表現でテンプレート等を使用しない場合、まさに白紙の状態から構成を組み立てる作業になります。
元々、頭蓋仙骨治療は物理的な要素とエネルギー的な要素のクロスオーバーした領域だと言うイメージはあったので、これを分けることなくページを構成して行くと、物理的な要素を記述しているのについついエネルギー的な記述が入り込んでしまったり、その逆が起ってしまったり、これらの試行錯誤の末に、物理的な要素とエネルギー的な要素に分けた構成で記述するスタイルに思い至り、その構成での最初の更新が、2011/11/14でした。
(よろしければ、『 エネルギー的な要素 』 のページ、一番下の(HP製作者のつぶき)もご覧下さい。