ヴォーカル ・ パフォーマンスアップ ・ セッション
注意:個々の施術はかなり微妙な感覚を要求されます、Webを読まれて不用意に行う事は絶対にお止め下さい
同時に、意図を理解しないでの施術は効果が得られない可能性が高いです
2013年の春より、ヴォーカル ・ パフォーマンスアップ ・ セッションとして、ヴォーカルのパフォーマンスアップに特化したセッションをメニューの一つとして立ち上げました。
そして、2013年の暮れよりヴォイストレーナーの方と研究会を行いました。
研究会では、全身へのアプローチの効果をリアルタイムに実際の発声で確認しながら試行錯誤を重ねた結果、効果の期待できる部位を、『 ヴォーカルのパフォーマンスアップに効果的な5つのエリア 』 として絞り込むことが出来ました。
1、はじめに
ボディワーク的な身体へのアプローチで、ヴォーカルのパフォーマンスをアップできないだろうか?
との問いかけから、全身へのアプローチのヴォーカルへの効果を研究し、『 ヴォーカルのパフォーマンスアップに効果的な5つのエリア 』 として絞り込むことが出来ました。
また、側弯症の治療 において、側弯の大元である、胸郭の開放、歪みのリリースの手法が私の中で確立されて来ました。
そして、このノウハウは、ヴォーカルのパフォーマンスアップに関しましても、大変に役に立つことが判明して来ました。
具体的な5つのエリアについては以下をご覧いただくとしまして、セッションにおいては、最初にリリースをお勧めしたいのが 『 横隔膜の腱中心 』 と 『 頚椎3番 』 です。
エリアにもよりますが、効率的にアプローチすれば、1回のセッション(90分〜120分)で、1〜3箇所のアプローチが可能です。
『 横隔膜の腱中心 』 のアプローチを受けてみて、効果が感じられましたら、胸郭の開放に進むことも選択肢の一つしてヴォーカルのパフォーマンスアップに繋がると思います。
但し、ここでの胸郭の開放は、肋骨全体の動きを改善させるもので、かなり大掛かりな施術となり、これだけで数回のセッションを要するケースが多いです。
2、効果的な5つのエリア
  エリア   効果
頚椎3番 発声の器官である声帯は頚椎3番で支えられています、影響大です
後頭部 頚椎全体の自由度の改善
横隔膜の腱中心 声量アップ、ヴォーカルのハンドリングの改善
篩骨 ( 頭蓋仙骨部 ) ヴォーカルの抜けの改善
腸腰靭帯 声量アップ、ヴォーカルの安定感の改善
★頚椎3番 ( 頚椎3番の開放を最初にお勧めする理由 )
口から入った管は、すぐ下で前側は気管支に、後ろ側は食道にと分岐しており、この分岐点のすぐ下に甲状軟骨と輪状軟骨があり、甲状軟骨の内側に声帯があります。
これらの組織は、更にすぐ後ろの頚椎によって支えられており、声帯を含めた喉の柔軟性は頚椎の柔軟性と密接に関係しています。
さて、発声を行う器官である声帯ですが、ちょうど頚椎の3番の前方にあり、頚椎3番リリースすることで声帯の微妙な動作が滑らかになり、ヴォーカルのパフォーマンスアップにダイレクトな効果が期待出来ます。
また、声帯は、輪状軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、輪状甲状筋、輪状披裂筋、斜及び横披裂筋、甲状披裂筋、声帯筋、等々の色々な細かいパーツにより構成されています。
この細かいパーツも手技で調整が可能ですが、ヴォーカルパフォーマンスとしては先ず最初のアプローチとしては頚椎3番をお勧めしています。
 ( 声帯につきましては  影響の大きいエリア >  声帯    を参照して下さい )
因みに、頚椎のリリースですが、一般的にはかなり難度の高いアプローチの様です。
当方は、4〜5種類のテクニックを症状に合わせて選択して行っています。
★後頭部
頚椎3番のリリースにより、声帯の微妙な動作が滑らかになりますが、頚椎全体を考えると、後頭部のリリースが効果的です。
この後頭部ですが、『 後頭隆起 』 と呼ばれる突起があり(触ると段差として感じられます)、背中を上下に走る脊柱起立筋の最上部がこの後頭隆起に付着しています。
そして、脊柱起立筋の後頭隆起に付着している辺りは、固くなったり軽い癒着を起こしているケースがしばしば見受けられ、この部分が滞ると、脊柱起立筋により後頭部が引き下げられた状態になります。
こうなると、俗に言う顎が上がった状態となり、頚椎全体の自由度が低下し、可動範囲が狭くなり、声帯そのものの可動性や自由度も低下します。
発声時の声帯全体を一つのエリアとして見ますと、胴体に対してこのエリアの位置や角度を微妙に変化させて表現力をアップさせるのですが、後頭部のリリースはこの様な動作の改善が期待できます。
また、後頭部のリリースは、肩こり、首こりに対しても効果的です。
★横隔膜 : 腱中心のセンターエリア
横隔膜はその動きで発声時の空気を駆動しますので、車に例えるとエンジンに相当します。
従い、横隔膜の滞りの解消はヴォーカルのパフォーマンスアップにとって大きなウェイトを占めます。
そして、実際に横隔膜を正確に触診してみると、横隔膜にはいたる所に滞りがあるケースも多いです。
その様な中で、ヴォーカルに最も影響が大きいのが、右図に示した『 腱中心のセンターエリア 』 になります。
横隔膜の滞りを全てリリースすることも可能ですが、ポップス系のヴォーカルの場合、若干オーバークオリティな感じで、腱中心のセンターエリアへのアプローチで一旦様子を見ることをお勧めしています。
因みに、横隔膜全体を使って発声する場合(例えばクラッシック系のヴォーカルなど)、横隔膜全体のリリースはとても効果的な施術となります。
また、横隔膜の腱中心のセンターエリアの真上には、左右の肺を隔てる組織として、『 縦隔 』 と呼ばれる部位があり、横隔膜が横方向の組織で上下を隔てるのに対して、縦方向に左右を隔てています。
この縦隔の開放は、ヴォーカルのパフォーマンスアップに効果があります。
 ( 横隔膜、及び縦隔につきましては、このページの下にある  横隔膜について(詳述)  も、参照下さい )
これらの延長線上として、胸郭全体の開放も効果的だと思います。
 ( 胸郭全体の開放につきましては、側弯症の治療 > 胴体の歪みのリリース も、参照下さい )
★ 篩骨 ( 頭蓋仙骨部 )

頭蓋篩骨部分、拡大図

頭蓋全体図
篩骨は上に掲げた解剖模型の写真に示したとおり、鼻の根元の少し深い部分にあり、また、構造はウエハースのようにスカスカになっており、まさに、『 声の抜け 』を左右します。
頭蓋骨全体は、23個の骨片により寄木細工のように構成されており、脳脊髄液と呼ばれる液体の循環に伴い、膨張収縮の動きを繰り返しています。 ( 詳しくは、頭蓋仙骨治療 の項を参照下さい ) 
この様に、健全な頭蓋は、本来、呼吸の様な自立的な動きを繰り返していますが、事故や過大なストレスにより、動きが滞ってしまうことがあります。
この滞りは、ヴォーカルに対しましても、抜けの悪さと言うパフォーマンスの低下として現れます。
これらの滞りは、通常の頭蓋仙骨治療施術でも改善が可能ですが、ヴォーカルのパフォーマンスアップを意図とすることで、アプローチの質は若干変化し、更に効果的になります。
因みに、当方は 頭蓋仙骨治療 を全ての治療の根幹と位置づけており、ハイレベルな施術の提供が可能です。
★腸腰靭帯
横隔膜は発声時の空気を駆動しますので、安定した駆動の為には、横隔膜自体がしっかりと支えられていることが必要です。
横隔膜を車のエンジンに例えましたが、車がパフォーマンスを発揮する為には、エンジンがシャーシーにしっかりとマウントされている必要があるのと同様に、ヴォーカルも横隔膜が体幹にしっかり支えられている事でパフォーマンスを発揮することが出来ます。
そこで横隔膜の構造ですが、横隔膜は右上の図の通り、左右の『 脚 』 により腰椎に付着し、この付着部により腰椎で支えられています。
従い、腰椎の安定が必要になると同時に、腰椎は更に仙骨を土台としてその上に載っており、これらの安定の為には、色々な要素が関係して来ます。
そして、これらの色々な要素の中で、最も急所になるのが腸腰靭帯と考えています。
腸腰靭帯は、腸骨と腰椎を斜めに繋ぐ靭帯で、しばしば固くなっており、この部分の柔軟性の回復が横隔膜の安定にとても効果的です。
車に例えますと、エンジンマウントのラバーブッシュがヘタっていない事が重要で、これは、腸腰靭帯の柔軟性が保持されている事に相当する感じです。
但し、腸腰靭帯のみにアプローチすればOKと言う訳でも無く、ケースバイケースで周辺の組織にもアプローチが必要なケースも多いです。
因みに、腸腰靭帯の柔軟性の回復は、腰痛に対しても効果的です。
3、ヴォーカルに影響の大きいエリア
  エリア   影響
声帯部分 声帯そのものの調整も可能ですが、微妙な表現力の変化として現れる様です
下咽頭収縮筋 発声障害で効果的なケースがあります、ヴォーカルにはお勧めしません
咽頭下筋群 (工事中)
★声帯そのものについて
声帯そのものにつきましても、微妙な調整が可能です。
声帯を構成するパーツとしては、輪状軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、輪状甲状筋、輪状披裂筋、斜及び横披裂筋、甲状披裂筋、声帯筋、等々がありますが、これらの構造を全部理解した上で、可動性の向上や、左右のバランスの改善、等々について色々な実験を試みました。
その結果、個別性はあるにしても、一長一短な感じで、場合によっては微妙な声のコントロールがズレてしまうケースも見られました。
ただ、輪状軟骨と甲状軟骨を繋ぐピボット軸受け、等々のリリースは発声に対して、本質的な良さを感じてはいます。
この辺りのリリースは、ご要望がありましたら、ご相談の上で進めて行きたいと考えております。
★下咽頭収縮筋
喉の構造ですが、前面には、半円形の筒状の甲状軟骨(いわゆる咽喉仏:容易に触れることが出来ます)、その下側に輪状軟骨があり、甲状軟骨の後方、輪状軟骨の上方に声帯が収まっています。
甲状軟骨は半円形の筒状で、この両側面から後ろ側にグルッと周る形で下咽頭収縮筋と呼ばれる筋肉があり、甲状軟骨と下咽頭収縮筋は、声帯を格納する円筒状のケースを構成しています。
この下咽頭収縮筋ですが、筋肉の特性上他の筋肉と同様に滞りや歪み、拘縮が見られ、発声に影響を及ぼしているケースがあります。
また、この筋肉は、直接触るとは出来ませんが、特殊なテクニックで開放が可能です。
ですので、下咽頭収縮筋の開放は、声帯の収まっているスペースを広げる効果があり、ヴォーカルのパフォーマンスアップに多大な効果がある場合があります。
しかし、効果も大きい反面、声帯の微妙なバランスが変わってしまうケースもあり、一般的にはお勧めしていません。
但し、咽喉が絞まってしまう等々の発声障害につきましては、下咽頭収縮筋の開放は絶大な効果があります。
本件に付きましても、アプローチの希望等の方は、メールにてご相談下さい。
4、ヴォーカル ・ パフォーマンスアップ ・ セッションの意義
声楽は、人間の身体を楽器として使い、声を出します。
鍵盤楽器や弦楽器、等々でしたら、1日10時間とかのハードな練習も可能でしょう、しかし、生身の身体は練習量にも限界があるようです。
そんな中で、日々の練習で自分の発声を作り上げて行くのですが、身体の構造的な問題に対しては少し別の角度からのアプローチで改善を図る方法があります。
この様なアプローチにより、練習だけでは超えられない壁を超える事が出来ます。
この事は、発声練習を積み重ねて改善を図ると同時に滞りに直接施術することにより、同じ練習量でより大きな改善が見込めるとも、言えると思います。
5、身体の緊張、力みについて
発声のときに、力まずに声が出せることがヴォーカリストにとって大切なことの一つだと思います。
身体の物理的な滞りがリリースされることで、身体の緊張が改善され、力み改善にも繋がるのと考えています。
・精神的な面について
一般的に、力みとか過緊張は、自分で自分の身体の状態を感じられないと、より大きく出ます。
最悪の場合、力みとか過緊張がどんどん大きくなってしまうケースもあるようです。
自分で自分の身体の状態を感じられると、それ以上力んだり緊張したりするのをコントロールできるようになります。
頚椎や後頭部、横隔膜や腸腰靭帯の滞りをリリースすることで、コントロール性が向上し、より身体のコンディションや動きを感じられるようになり、自然に力みや過緊張が少なくなります。
6、参考文献
誠信書房から、『 音楽家ならだれでも知っておきたい呼吸のこと 』 と言うタイトルの本が出版されています。
身体の構造的問題が発声に及ぼす影響を、イラストを多用し、歌い手の身体の気づきに焦点を当てて解りやすく解説されており、とても良い本だと思います。
そして、ここで述べられている項目は、発声におけるパフォーマンスの向上として、殆どの部位で施術による改善が可能です。
言い換えると、ここに載っている骨格とか筋肉の各部について、歪みとか捻れ、硬縮が発生しますと、発声のパフォーマンスが低下します。
また、これらの部位の施術は、この本で意図している、歌い手の身体に対する気づきのアップにも繋がります。
7、セッション進め方
冒頭にも書きましたように、5つのエリアを感じていただき、何かインスピレーションがありましたら、先ずそのエリアへのアプローチからセッションをスタートする方法が良いでしょう。
特に気になるエリアが無ければ、先ず呼吸の改善をやって見ましょう、横隔膜の腱中心のセンターエリアへのアプローチからスタートする方法が良いと思われます。
出来れば、当方のセッションルームでアプローチの前後で歌ってみることをお勧めします。
このセッションは、これと言った明確な手順はありませんので、全てご相談の上でセッションを進めて行きます。
8、効果はあるのか?
ヴォーカルのパフォーマンスアップについて、試行錯誤を重ねた結果を、長々と書いて参りました。
色々な方に施術を行いまして、その感想のようなもをここに記載したいと思います。
どうも、効果は人によってかなりばらつく様な印象を持っております。
ばらつく原因ですが、自分の身体に対する身体感覚の違いから来るような気がしています。
ヴォーカルをやられていて、
 ・ 鼻から額にかけて声の抜けが悪い、なにか改善できないだろうか?
 ・ もう少し大きく息が吐けるともっと歌えそうだ。
 ・ 身体全体にもっと声が響かないだろうか?
 ・ 歌っていると脚が疲れてしまう、改善できないだろうか?
 ・ 日によってパフォーマンスがバラつくが、身体のコンディションから来るのだろうか?
 ・ ヴォーカルが行き詰ってしまった、何か身体からのアプローチで打開する方法は無いだろうか?
こんな疑問を感じたことはありますでしょうか?
このページは、かなり詳しく記述しています、お読み頂いて、ご自分の身体が変化してヴォーカルのパフォーマンスがアップするイメージを作れますでしょうか?
もし、身体感覚としてイメージが作れるようでしたら、きっとお役にたてると確信しております。
ご意見、ご感想、等々のメールはお気軽にどうぞ
☆ セッションの受け方の説明は コチラ ☆
☆ セッションルームの場所(吉祥寺駅徒歩2分) ☆
ご質問、お問い合わせはコチラから

以下、補足的にもう少し詳しく(かなり詳しく?)説明しています、
本項をメニューに挙げるまでの背景、個人的なオーディオのこと、等々書いています、宜しければご覧下さい
  テーマ   内容
a、横隔膜について 横隔膜について、解剖学的、構造機能的に、少し詳しく説明しています
b、その他の要素 身体の各部分についての、発声との関係をまとめています
c、セッション立ち上げの経緯 ヴォーカルパフォーマンスアップセッション立ち上げの経緯を説明しています
d、オーディオとの関連 元々オーディオマニアでした、(^^)
a、横隔膜について(詳述)
(以下の記述は、横隔膜全体を動かす発声を対象に書いております、ポップス系の場合はまた少し違って来ます)
本文に述べた通り、ヴォーカルにおける横隔膜の機能は、車に例えますとエンジンに相当すると思います。ですので、横隔膜の機能は、発声における動力源に相当すると思います。
ここでは、横隔膜について、その物理的な動作の様子、筋肉としての特殊性、等々を少し詳しく説明します。ご興味、ご関心のある方は、是非ご一読下さい。
横隔膜は肺のすぐ下にある筋肉で、文字通り身体の上下を、横方向の隔壁として隔てています。形状的には凸のドーム状になっており、数ミリ程度の均一な厚さで出来ています。
中央は白色で腱中心と呼ばれ、ドームの天井に相当し、腱中心の周囲は筋肉繊維が放射状に広がり、肋骨の最下部まで下降し、そこで肋骨に付着しています。
また、後方には腰椎の両側に、『 脚 』 と呼ばれる部位があり、まさに2本の脚の様な形状で下降し、腰椎の椎間板に付着しています。
(脚については、脚について を参照下さい)

横隔膜を下側から見ています
横隔膜は放射状に構成されていますが、筋肉としての動きを見た場合、脚の腰椎への付着部を起止部として、肋骨への付着部を停止部として構成され、腱中心を上下に動かす動作を行います。
この動作は、筋肉としてはかなり複雑な動作だと思われます。
同時に、この上下運動に伴って胸郭全体も動き、呼吸が行われます。
(横隔膜の動作における、起止部及び停止部については 横隔膜の特殊性 を参照下さい)
ここで呼吸時の横隔膜の動きですが、全体が大きく滑らかで均一な動きが理想的ですが、なかななかこの様には動いていません。
実際に呼吸時の横隔膜の動作を正確に触診しますと、所々に動きが鈍かったり、遅れて動いていたり、場合によっては動きが失われている場所があったり、カクカクと動いたり、色々な制約が発生している場合が多いです。
これらの制約は、筋繊維の、捻れや歪み、拘縮、一言でいえば『 滞り 』が原因ですが、横隔膜全体を動かして発声する場合、色々な形の発声上の制約として、ダイレクトに歌唱に現れます。
ヴォーカルのパフォーマンスアップセッションとしては、この滞りのリリースが、その対象になります。
実際の施術ですが、横隔膜そのものは直接的に触ることは出来ませんが、オステオパシーの間接法と呼ばれるテクニックを用いて滞りをリリースします。
横隔膜の滞りは、その構造的な複雑さにより、2重、3重に蓄積されているケースも多く、一番大きな滞りから順に丁寧にリリースを図る事によりリリースを進めますが、かなり丁寧な施術になります。
横隔膜の動きが改善されますと、横隔膜全体を動かして発声する場合、効果はダイレクトに歌唱に現れます。
また、横隔膜の開放による呼吸の改善は、ストラクチュアルインテグレーション やその他の治療でも必要に応じて行いますが、あくまで全身とのバランスの中で行うケースが多く、この部分のみに時間をかける事は通常いたしません。
ストイックに発声のパフォーマンスの向上をお考えの方は、横隔膜全体の開放をお勧めします。
・脚について : 左右の脚がズレて椎間板に付着している件
横隔膜は腱中心を中心にして、放射状に筋肉が構成されていますが、前述の通り、横隔膜全体を体幹に対して保持しているのは、後方のにある左右一対の脚と呼ばれている筋肉です。
脚は腰椎に付着して体幹に固定されていますが、この部分を少し詳しく説明します。
先ず腰椎について説明します。腰椎は椎骨と椎間板より構成され、椎骨は左右に横突起及び後方に棘(キョク)突起があり、この部分に脊柱起立筋や回旋筋等の筋肉が付着しています。
この椎骨と椎骨の間に軟骨である椎間板が挟まれ、クッションの役割を担い、脊柱全体の柔軟性を作り出しています。
そして、横隔膜を支えている左右の脚は、椎骨ではなくこの椎間板に付着しています。
更に付着部は一箇所ではなく、複数の椎間板に渡って付着し、同時に左右同じ位置ではなく、右脚が左脚に対して若干下側にズレて付着しています。
この、『 脚部が椎間板の複数箇所に付着していること 』、『 付着部が上下にズレていること 』 これらの事は、ともすれば見過ごされがちですが、大きな意味を持っています、以下、説明します。
脚が椎骨では無く椎間板に付着している理由は、椎骨より柔軟性のある椎間板に付着することで、付着の強度を稼いでいます。
付着部は呼吸の度に繰り返し引っ張り荷重が加わるため、椎骨よりも柔軟性がある椎間板に付着することで、付着部の剥離を防いでいる訳です。
同時に、複数箇所に付着することで、更に強度を稼いでいます。
また、左右で付着部が上下にズレているのは、引っ張り応力を分散することで、やはり剥離を防いでいると考えられます。
横隔膜が相当に強い力で、且つ複雑に駆動されていることが、ご理解頂けると思います。
・横隔膜の筋肉としての特殊性
一般的な筋肉の機能的構造ですが、全ての筋肉の両端は関節を経由した別々の骨に付着し、収縮することで関節が動き、このメカニズムで人間は動作を行います。
更に詳しく述べますと、便宜上ですが骨を固定側と可動側に分けます、そして筋肉の片端で固定側の骨に付着する部分を起止部と呼び、もう片端で可動側の骨に付着する部分を停止部と呼んでいます。
要するに、筋肉はその収縮運動において、固定側の骨( 起止部 )をベースとして、可動側の骨( 停止部 )を引き寄せるように働いています。
このことを、右の図に示している腰方形を例に説明します。腰方形筋の起止部は骨盤の上縁に付着し、停止部は最下部の肋骨に付着しており、筋肉が収縮して腰を反らせる動きを行います。これは最もオーソドックスで解り易い動きです。
この機能を横隔膜にあてはめて見てみましょう、横隔膜の起止部側は左右の脚の下端で腰椎の複数の椎間板に固定側として付着し、停止側は肋骨下辺を可動側の骨として胸郭全周に渡って付着し、運動しています。
横隔膜を下から見ています
(説明の為に再掲示しています)
更に、起止部と停止部の中間に収縮の動作を行わない腱中心があり、この腱中心を上下に動かすことで、呼吸の動作を行っています。これは、筋肉としてはかなり複雑な構造として働いていると思われます。
元々、筋肉の筋繊維は複雑になればなるほど捻れや歪みが起きやすく、また、骨との付着部近辺に癒着が起きやすい特性があります。
通例、横隔膜は複雑に滞っているケースが多いのですが、まさに構造の複雑さも起因している感じで、前述した様に筋繊維に捻れや歪みが2重、3重に蓄積されているケースも多いです。
また、脚の部分が滞っているケースもしばしば見受けられます。
この様な2重3重の歪みや滞りも、一番大きな制約から順に丁寧にリリースを図る事により解消が可能ですが、効果的な施術の為には、高度な治療技術と、同時に高度な触診技術も要求されます。
そして、以上の構造・機能の特殊性を理解した上で施術を行うことにより、より効果的なリリースが可能になります。
・縦隔について
腱中心のセンターエリアの上に、縦隔と呼ばれる組織があり、横隔膜が横方向の組織で上下を隔てるのに対して、縦方向の組織で左右を隔てています。
この縦隔は、単一の組織では無く、大動脈、大静脈、食道、気管支、心臓、等々が寄り集まって構成された構成で、左右を隔てる構造になっています。
(以下、書きかけです‥‥)
b、その他の要素
横隔膜も含めて発声に影響のある身体の各部をお伝えします。
以下の全項目が、声楽のパフォーマンスアップセッションとして、実際に施術が可能です。
 部分  キーパーツ  期待される効果
口蓋 上顎骨、口蓋骨、舌骨、舌骨舌筋、顎二腹筋 微妙な表現力
喉(気管) 頚椎、斜角筋、頚長筋
下咽頭収縮筋
声の純度、ひっかかり感の解消
声のスケールアップ
気管支 胸骨体、縦隔、気管支 声の力強さ、ひっかかり感の解消
胸郭 肋骨、肺 声の力強さ、立ち上がり、コントロール性
腹部及び臀部 骨盤、仙骨、股関節、殿筋群、骨盤底 横隔膜の機能のアップ
脚部 脛骨、腓骨、距骨、踵骨 声の土台の安定性、しっかり感
片足立ち 股関節、脛骨、腓骨、距骨、踵骨 声の響きの改善

・口蓋について
上顎の部分は、左右の上顎骨及び左右の口蓋骨により構成され、この部分は長年の咀嚼により押し込められ続けるため、殆どの場合積年の歪みが蓄積されています。
しかし、丁寧に複数回のアプローチを繰り返すことで上顎の開放は可能で、口蓋全体の柔軟性が得られ、また、歯の当たりも変化します。
舌は声を具体的にコントロールするパーツで、表現力に関係します。
この舌ですが、舌骨に付着しており、舌骨周りの開放により舌の可動性の改善されます。
因みに、舌骨周りの開放は、ストラクチュアルインテグレーション でも、第7セッションで行います。
・喉(気管)について
喉の柔軟性が不足していると、声の澄んだ感じが低下し、ひっかかり感が出てきます。
場合によると声がざらついた感じにもなります。
気管は、その後方にある頚椎により支えられており、頚椎の固さは気管の固さに繋がります。
ここでキーパーツに挙げた、斜角筋と頚長筋は、共に左右一対の筋肉で、頚椎の両側前方から気管の後面を包むように位置しています。
これらの筋肉の開放により、頚椎及び気管の柔軟性がアップし、声の純度の改善が期待できます。
・咽頭神経について
咽頭収縮筋を始めとする、咽喉の動きを支配する神経を、『 咽頭神経 』 と呼びます。
この咽頭神経についても、アプローチすることが出来ます。
特に、咽頭神経は下咽頭収縮筋にも張り巡らされており、咽頭神経の通り具合を診ることで下咽頭収縮筋のコンディションを掴むことも可能です。
具体的には、下咽頭収縮筋及び咽頭神経は左右対称に構成されており、この左右差を診ますとアンバランスなケースが多く、この様な場合は、上記、『 下咽頭収縮筋 』の項でお伝えした、『 円筒状のケース 』が扁平した円筒に感じられます。
エネルギー的な治療により、神経のバランスをとり、円筒状に回復することが出来ます。
物理的施術とは一味違った、咽喉の開放感を感じられるケースが多いです。
・気管支について
気管支とは気管の最下部、左右の肺に繋がるために枝分かれしている部分を指します。
元々、身体の組織はその継ぎ目(不連続の部分)で滞りやすいと言う一般的な性質があります。
この部分が滞ると折角の息が出だしのところで流量に制約を受けてしまいます。
気管支の開放により声の力強さ、ひっかかり感の改善が期待できます。
・胸郭(肺)について
呼吸は横隔膜と胸郭が連動して行われています。
この胸郭ですが、全体がゴムマリのように同時に均一に柔軟性を持って広がったり閉じたりする動きが理想ですが、殆どの方は動きにアンバランスや歪み、ワンテンポ遅れて動く部位、等々がありますが、これらの物理的な滞りも、改善が可能です。
胸郭の改善により、声の力強さ、立ち上がり、コントロール性の改善が期待できます。
殆どの場合、横隔膜のリリースと同時に必要に応じて胸郭の開放も行います。
また、肺そのものもですが、水平裂、斜裂と呼ばれる境界で肺胞と呼ばれる単位に分かれており、この境界もリリースが可能です。
・腹部及び臀部について
腹部や臀部のコンディションも、横隔膜の動きに大きな影響を及ぼします。
腹部のエリアは、上側は横隔膜により、下側は骨盤底により、挟まれるように構成されています。
これらは横隔膜の上下運動に伴い、腹部にも上下に圧がかかるのですが、腹部から骨盤底にかけて固さがあるとこの固さが横隔膜の動きの制約になってしまいます。
具体的には、腰椎や骨盤、仙骨、臀部の筋肉、等々の開放により、横隔膜の動きが軽くなり、発声の正確さや力強さの改善が期待できます。
(本件、本文中に示した 参考文献 にも詳しく説明されています)
・脚部について
脚部は、いわば楽器としての身体の土台に相当し、声の安定感や高域の抜けにも影響があります。
セッションとしては、踵、及び脚全体の骨格系の歪みの調整、リリースを行います。
因みに、脚の骨格系の歪みとは脛部にある2本の骨(脛骨、腓骨)の位置関係のズレから来ている場合が殆どで、この部分のズレが足首及び踵の歪みの大元になっているケースが多いです。
立ち居地でご自分の足の着地の様子を感じてみると、左右でアンバランスを感じませんか?踵の着地感で左右差はありませんか?
これらは全て調整可能で、脚が調整されると、立ち居地で、両方の足の裏でしっかりと体幹を支えることが可能になります。楽器としての土台が整うことにより、低域の安定感、声の高域の伸び、微妙なコントロール性、等々の改善が期待できます。
・片足立ちについて(参考)
通常、歌を歌うときは両足で立って歌いますが、片足立ちで歌ったことはありますか?
片足立ちで歌ってみると、身体全体の声の響き具合が変化すると思います。
私の場合、明らかに全身の骨格系の響きが良くなり、骨格の繋がりとして踵から頭蓋まで、響きがきれいに抜けることが感じられます。
ただし、片足立ちでは疲れてしまいます‥‥。
両足で立ってもこの感じが得られるように調整は可能と思われますが、相当に個別性の強いセッションになると予想されます。
また、現時点、縦隔の開放が有効なアプローチの一つであることが判明しています。、
c、 セッション立ち上げの経緯
頭蓋仙骨治療を受けに来てくれた学生の方がクラシックの声楽に取り組んでいるとのことで、 2012年の8月より、モデルクライエントさんとして声楽のパフォーマンスアップに特化したセッションを色々と工夫してみることになりました。
色々と試行錯誤を繰り返しながら、都合30数回のセッションを行いましたが、これは私にとっても貴重な経験で、声に関する各部の色々なノウハウを得ることが出来、 これらをベースにしてこのページを立ち上げています。
d、 オーディオとの関係
オーディオはバッハの器楽曲、とくにハープシコード曲を最高の音質で聴きたいと思いで、色々と試行錯誤を繰り返しました。
この様な試行錯誤を延々と繰り返して行くと、徐々に感覚が研ぎ澄まされて行き、一聴しただけでパーツや機器のキャラクターが掴めるようになりました。
( まだ私が会社員の頃の話で、俗に言うところにオーディオマニアですが‥‥)
音楽を情緒的に楽しむのでは無く、テクニカル的に捉える感性は磨かれたと思っています。
会社員(機械の設計の仕事をしていました)から、身体の調整の仕事にシフトしまして、再度この様に身体とヴォーカルの関係について、セッションとして関われるのはとても嬉しいです。